さらに話を聞くと、要するにこうした「マーケットの猛者」たちは、何のことはない、巨額なマネーを投じたビックディールを行う前には必ずといってよいほど、彼女の元を訪れ、その適否を尋ねているというのだ。むろん、その結果は百発百中だというのだから驚きだ。未来に対する「透視能力」を持っているということなのだろう。
しかしその一方で、そう聞くと思わず吹き出してしまうのも確かだ。顧客に対しては金利やらカタカナの新しい英単語やらを並べてもっともらしく説明する彼ら「マーケットの猛者」たちは、とどのつまり、他人の「透視能力」に投資の最終判断を頼っているというのであるから。
だが実はこの話、決して笑いごとではない。わが国ではこの手の「超能力」というと、うさんくさいものであり、およそまともな人ならば相手にせず、取り扱うべきではない問題であるとされている。しかし海の向こうにおける事情は、まったく異なることをご存じだろうか。
政権内に、必ず『透視能力』を持つ者がいるアメリカ
その典型がアメリカだ。冷戦下のアメリカでは「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)」と総称される研究プログラムが政府および軍の手によって、少なくとも1995年までは続けられていたことが知られている。その目的は「未来を透視する能力のある超能力者」たちを全米から集め、国家としてのアメリカの未来、特に東西冷戦の行方について「透視(remote viewing)」してもらうことが目的であったとされている。
しかしこのプログラムは、その後、1995年になってその結果が中央情報局(CIA)の手によって集められることになる。そしてあらためて分析した結果、超能力者たちが「透視」した結果とその後に現実に起きた出来事との相関関係が、ランダムに述べた結果とその後の現実との相関関係よりもわずかばかりに有意であることは判明したが、それ以上のものではなかったため、それまでに巨額の国費を投じられていたにもかかわらず、終了することになったと表向きはされている。
その一方で、各国の簿外資産を極秘裏に処理するラインに直結する人物から、私はこんなことを聞いたことがある。「アメリカの大統領が選ぶ閣僚たちの中には、必ずひとり『透視能力』を持っている人物がいる。えてしてそれほど目立つことのない職務(たとえば労働長官など)に就いていたりする、そうした人物たちが担っている役割は、大統領が重大な決断をするとき、彼らには見える『未来』に基づいてアドバイスをすることだ」
アメリカの大統領といえば、国際社会全体の生殺与奪を握っている人物である。その決断は、アメリカ国内はもとより、世界のすべての国に生きるすべての人々に大きな影響を与える。ところがその決断を下すにあたって、よりによって自らの傍にいる超能力者に対しアドバイスを求め、超能力者は「透視」の結果を語るというわけなのだ。あまりにも滑稽な話ではある。
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