中野:でも、海士町には大学がありませんよね。それだと、高校生までは確かに島にいるとは思うのですが、その先が問題です。結局、都心の大学などに出ていってしまう。
「若者輩出力」失う地方、その影響はいずれ東京に
藤野:中野さんがおっしゃるように、高校を卒業してからも地元で活動できる環境がないと、若い人たちがどんどん外に流出してしまい、なかなか戻ってこなくなります。
逆に、大学や専門学校がある地域は、そのまま若い人たちが地元にとどまるケースが多いようです。大学も公立しかないと、受け皿が足りなくて、大半の高校生は県外の私立大学を受験するようになります。結果、若い人たちの人口がどんどん減ってしまうのです。地方の人口問題は、非常に多くの問題が絡んでいるので一概には言えませんが、高校以上の教育体制をしっかりさせることが、解決策のひとつであるのは間違いないでしょうね。
中野:地方が抱えている問題はどこも同じで、若い人がどんどん東京に流れてしまう。20世紀型の中央集権的な体制の影響といってもいいでしょう。
藤野:とはいえ、地方からの人口流出は徐々に減ってきているのですが、その原因は決して喜ばしいものではありません。要は、地方に住む若い人たちが減った結果、子供の人口が年を追うごとに減少し、若者を輩出する力すら衰えてきているのです。その裏返しは、東京に流入する若者が減っていくということです。人口減少は地方の問題だけではなく、時間の経過とともに、東京にもはね返ってくるのです。あと20年もすると、東京も深刻な高齢社会になるでしょう。
渋澤:海士町は本土からのIターン者、つまり、ソト者・ワカ者・バカ者たちが増えていることが地域活性化のポイントです。一方、特徴を出せている地域は、お2人が指摘しているとおりでしょうね。そして、おっしゃるように地方だけの問題ではなく、東京ではアルバイトも人不足ですしね。
藤野:そうですね。たとえばコンサートの警備の仕事なんて、日給2万円でも人が集まらないそうです。人口が多ければ、いろいろな人がいますから、多少きつくても稼げる仕事がしたいと考える人もいるのでしょうけれども、今のように若い人が少なくなると、ほどほどの稼ぎでいいから、楽な仕事がしたいという人ばかりになってしまう。いわゆる「3K」の仕事に人が集まらないのは当然でしょう。コンビニエンスストアなどは、本当に深刻な人手不足に陥っていて、地方のフランチャイジーからは、「頼むから24時間営業は、もうやめてほしい」という声がかなり上がっているようです。
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