渋澤:いつでも、どこでも、ちょっと外に出れば何でも手に入ったコンビニエンスストアの24時間営業が取りやめになったら、そこに日本でも始まった米アマゾンの生鮮宅配「Amazonフレッシュ」が入り込んでくるという流れが目に浮かびます。日本全国すべてが置き換わることはないにしても、現在、アマゾンフレッシュがサービスを展開している地域(東京都区内の大半や千葉・横浜の一部など)は一段と広がるようですしね。
中野:労働人口が減っていますから、人材の奪い合いがますます熾烈になっていきますね。
渋澤:アマゾンジャパンの社長は、ジャスパー・チャンという方で、とても優秀なのはもちろんですが、つねに外部からさまざまな情報や意見を集めて、それを経営に生かしています。話の流れから少しそれてしまいますが、こういうところにアマゾンの強みがあるのかもしれませんね。
10年後、台所から包丁がなくなるかも
藤野:では、話がそれたついでに言いますが、人口流出によって経済の地盤低下が続いている地方において、農漁業の「6次産業化」が進められています。これを、よりよいものにするためには、もっと外部の動き、特に大都市で生活している人たちの生活スタイルを見る必要があると思うのです。
働き方改革で食生活が大きく変わる可能性だってあるわけじゃないですか。女性が社会進出することで、家事の効率化が求められますから、たとえばカット野菜とか、すでに下ごしらえが済んだ食材に対するニーズが高まっていくと思うのです。
10年後、台所から包丁がなくなることも、十分に考えられます。事実、昔は一家に5本くらい、種類の異なる包丁があったわけですが、いまや1本の包丁ですべての調理をこなす家庭も少なくないでしょう。このように、社会の変化と地域の産業はすべてつながっています。その感性が鈍いと、ビジネスの世界では駆逐されてしまうでしょうね。
中野:先日、地方出張したとき、その駅前の風景を撮った写真を見せてもらったのですよ。今から50年以上も前の1965(昭和40)年当時のものでしたが、とにかくものすごい人が歩いているのです。別にお祭りとか、そういうイベントがあったからというのではなく、自然に歩いている人が大勢いたのです。それだけ当時はにぎわっていたのですね。でも、今はどうかというと、あれだけ大勢の人が肩をぶつけ合いながら歩いていた商店街が、すべてシャッター通りになっていました。この状態からの復活は、本当に大変なことだと思います。
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