ゲーム音楽専門オーケストラ「JAGMO」の正体 マリオ、サクラ大戦、東方プロジェクト…

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ゲームソフトのデータ容量が限られていた頃は、プログラマーは極力データ量を抑えながら、電子音の組み合わせで表現を工夫した。それでも、ゲームの世界観と相まって、プレーヤーを魅了するすばらしい音楽が多々生まれた。

クラシックの技法をベースにした楽曲も多く存在し、「中世をイメージした場面ではバロック音楽を思わせるものが流れたりする」(山本氏)という。

さらに技術の進化でソフトのデータ容量に制限がなくなると、フルオーケストラによる演奏が組み込まれることも普通になった。ゲーム音楽の表現に広がりが出てきたわけだ。

これらに加え、ゲームファンの増加に伴い、ゲーム音楽を生で聴ける機会も増えていった。たとえばゲームメーカーが主催する「公式コンサート」や、プロ、あるいはアマチュアのオーケストラが自主コンサートの演奏曲目として取り上げるなどだ。クラシックとゲーム、この2つの文化は、水面下で徐々に接近してきていたわけだ。

一度の演奏会で異なるメーカーのゲーム音楽を聴ける

そんな中、誕生したJAGMOは、ゲーム音楽専門のプロオーケストラであることを大きな特徴としている。一度の演奏会でさまざまなソフトメーカーのゲーム音楽を聴けるのも、「公式コンサート」にない魅力だ。また、ブランド価値を高めるため「電子楽器を使わない」「コンサートホールで上演する」ことなどをコンセプトとしている。

JAGMOの運営母体はゲームやアプリ、ウェブサイトなどのさまざまなコンテンツを発信する企業のカヤックに属する。ただし、もともとJAGMOは独立した企業として活動していたところを、カヤックの事業と親和性があるという理由から、2015年3月に事業譲渡したという経緯がある。そのため、カヤック内のほかの事業部とは異なり、活動自体は独立して行っているのだという。カヤックに属することで、たとえば「Lobi」というゲームコミュニティのネットワークなどを活用できるメリットがある。

そのほか、質の高い演奏を提供するために、こだわっているのが人材だ。

JAGMO公演にかかわる奏者や編曲家などは、ゲーム世代である20~30代の若手から、山本氏自身が選んでトップクラスの人材を集めている。また公演費用の中でも大きな部分を占めるのが、時には80人以上となる奏者の出演料だが、ここでコストを抑えることはしていないという。ひとつには、奏者に意欲をもって取り組んでもらいたいため。また、若手を応援する意味合いもある。

日本のクラシック界では音楽大学を卒業した若手の受け皿が非常に限られていることが課題となっている。ソリストやプロオーケストラの団員になれるのは一握りだし、個々で演奏活動をしている人でも、生活の糧を得ることさえ難しいというのが現実だ。

「将来活躍していくためのステップとしてJAGMOを利用してほしい」(山本氏)

しかし、ゲームはクラシックと比べると、本来、オーケストラで演奏されてきた文化がないため、どうしても「レベルの低い文化」と見られがちだ。奏者にしても、クラシックの曲と同じように一生懸命取り組んでくれるかということが懸念だったという。

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