私がいないとダメ…「共依存夫婦」が抱える闇 「支配・服従」の関係性に陥っていませんか?

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4.「あなたのため」というフレーズを使う

相手を苦しめる人は、「あなたのため」というフレーズを使う傾向にあります。一見、「自分のことを考えてくれているんだ」とありがたく思うかもしれませんが、この言葉に支配欲が隠れていることを、使っているほうも使われているほうも無自覚なことが多いのが問題です。これは感情的恐喝と言われ、愛情や信頼を引き合いに出すことで、相手の罪の意識を刺激して、いいように相手を利用するための関わりだということを理解することが必要です。

以上のような攻撃を受けると、服従側は「自分が悪いのでは……」という罪悪感を抱きがちです。その葛藤とどう向き合っていくか、どのように相手とかかわることが大切になってきます。

「私のせいかも」と思うのをやめるのが初めの一歩

誰にでも、自分の意見を通したい、相手に自分と同じ感覚を持ってほしい、自分のペースを乱されるのは面白くない、という自然な欲求はあります。ただ、健全な関係性の中では、相手と自分の境界をしっかりと意識し、折り合う地点を、お互いの気持ちを大切にしながら模索していきます。

一方、攻撃性のある支配と服従の関係では、相手をやり込めたい、何とかして相手を思いどおりにさせたい、という思いが根本にあります。相手が思いどおりにならない場合は、攻撃の程度をエスカレートさせていく形となり、最終的には肉体的な暴力に至ってしまう可能性もないとは言えません。

相手から攻撃された場合は、これが相手からの支配だということに気づき、罪悪感を手放すことが最初の一歩となります。そのうえで、相手の論理に引きずり込まれないよう意識しましょう。正論を返しても、そもそも相手の理論は破たんしていて、わけがわからないものです。それに対して、誠実に答えようとする必要はまったくありません。真に受けないことが大切です。

また、相手が謝ったら許すというのも考えものです。「こんなに謝っている」「土下座をして涙まで流した」からといって、のど元過ぎれば元の関係に戻ってしまうようであれば、謝罪は単なる儀礼にすぎません。毅然とした態度で臨みましょう。

自分一人で対処できない場合は、周りの人に助けを求めたり、男女参画センター等の相談を利用することも視野に入れてみましょう。支配されていることに気づき、対処することが大切なのです。すっかり自分を追い詰めてしまい、気力を失い逃げ遅れる前に、是非行動を起こしていただきたいと思います。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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