非行少女を救う”元ヤン”生活アドバイザー 更正のきっかけは意外な一言

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西尾市は今、落ち着いてきています。私が担当している学校も最初はいろんな問題があったけれど、今は私を必要としなくなりつつあります。私自身、中学生たちとの歳の差は離れていく一方なので、10年後も20年後もこの仕事ができるとは思えない。あと数年しかできないと思っています。限られた時間の中で、私がここにいる意味を自分で作らなくちゃいけないのです。

勤務時間が不規則なので、「よくそんな仕事をやれるね」と友達に言われることもあります。でも、昔はヤンチャだった中卒の私が学校現場で先生たちと一緒に働いていることは奇跡ですよ。(勤務時間の)時間調整もしてもらっているし、生活も成り立っている。何の不満もありません。

非行少女の更生のきっかけは先生

私は学校が嫌いでした。子どもの頃は憎しみの対象でしかなかった。先生に対する不信感で問題を起こしたことも数えきれません。でも、そんな私の相談に乗ってくれて、背中を押してくれたのも学校の先生なのです。不思議だな……。

生徒も人間ですし、先生も人間なのです。両方の相性やタイミングさえ合えば、その子にとって学校は大きな分岐点になって、最高の居場所であり時間になると信じています。私もこれからは「学校孝行」をしなくちゃいけませんね。

西尾市役所前で教育委員会の先生たちと談笑する有田さん。向かって左は中学校時代の恩師で、現在は上司に当たる

20年前、学校を憎んで激しく拒絶しながらも、有田さんは大人たちに理解と助けを必死に求めていたのだろう。未熟すぎ純粋すぎて言葉にできなかったその声を拾い上げ、支えようとした教師たちがいた。だからこそ、有田さんは出産を機会に立ち直り、「学校孝行をしなくては」という気持ちに至ったのだ。自分の経験を大いに生かしながらも、「今の中学生とは年齢も時代も違う」と肝に銘じ、「子どもたちにどうしたら伝わるのか」を考えて結果を出し続けている有田さんに、仕事に対する真摯さを感じた。

最近は親の視点に近づいてきたというコメントも興味深い。子どもたちの問題行動の背後に家庭の問題が隠れているのならば、親の気持ちにも寄り添える有田さんは、まだまだ活躍の余地があるのではないか。「あと数年」なんて言わずに、教育現場にかかわり続けてほしい。できれば蒲郡市のヤンチャ中学生たちも指導してほしいな……。

 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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