非行少女を救う”元ヤン”生活アドバイザー 更正のきっかけは意外な一言

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その子が帰る前にお母さんにも会って、「子どもの話をちゃんと聞いてあげてください。そうしないと同じことの繰り返しですから」と伝えました。子どものSOSを周りの大人が察知して、支えてあげることが大事なのです。

家出したその子もこないだ結婚。私も式に参列してきました。もう20歳になっていました。卒業生たちとは今でも連絡を取り合っていますよ。ちょくちょく会いに来てくれます。もちろん勤務にはなりませんが、子どもたちはみんなかわいいです。

ただし、私も娘が大きくなってきて、視点が子どもから親へと変わってきた気がします。親の気持ちや苦労がわかるようになってきた。子どもが学校に行っていないことを夫にバレたくないお母さんとか、ストレスがいろいろたまっている。親も人間だから、背中を押してあげないと前に進めないこともあります。「こういうときは子どもとどんな会話をした? 次はこういう手段でやってみよう。私もこれをやるから、お母さんももう一歩、頑張ろうよ」と、何度でも話します。父子家庭でお弁当を作ってもらえない子には、行事ごとに私がお弁当を作ることもあります。だって、行事は思い出に残るじゃないですか……。

なぜ「ワル」にはしるのか……

――有田さんのご自身のお話も聞かせてください。僕は元優等生なので、いわゆるヤンチャ少年たちの気持ちや行動が理解できません。ワルぶって楽しいのですか?

私の場合、ほかに居場所がなかっただけです。中1で佐世保から愛知の田舎(西尾市吉良町)に引っ越してきて、方言が全然違うので、しゃべっていることを周りに聞き取ってもらえなかった。冗談も通じない、笑うツボが違う、みんなにバカにされているような気がする。

ヤンチャな女の先輩だけが、私の言葉を誉めて受け入れてくれました。「かわいいよ。焦らなくていいよ」って。一生懸命に伝えようとしていた私の気持ちが通じた気がして、居心地のいい場所だと思えました。この道しかないと、どっぷりハマりました。

――ヤンチャな先輩に目をかけられるということは、佐世保の頃から有田さんもヤンチャだったんじゃないですか?

あ、そうです(笑)。私はもともとヤンチャでした。でも、吉良町に来てからは本当に戸惑いました。佐世保の頃は家から学校のチャイムが聞こえるぐらいの距離だったのに、今度は家から学校まで7キロもある。自転車だと、どこに行くのも遠くて……。

――少しわかる気がします。有田さんが育ったご家庭のことはあえて伺いませんが、田舎暮らしで家も学校も楽しくないと最悪ですよね。逃げ場がない。

学校には毎日行っていました。給食を食べたかったので……。

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