2020年の夏季五輪は、東京で決まり?

吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット

「事前の票読み」は当てにならないIOC総会

ここで永田町的というと、日本人はつい「自民党総裁選」をイメージしてしまうかもしれない。「願いあげましては、○○派が何人、××派が何人、△%こぼれたとしても、積み上げれば過半数」みたいな計算である。ところがIOC総会の実態は、むしろ「民主党代表選挙」に近い。当日の開催都市のアピールを聞いて、その場の雰囲気で決めるという委員が少なくない。過去を振り返ってみても、結構なサプライズがあったりする。

例えば2009年のIOC総会では、真っ先に落とされたのがシカゴだった。あれはリーマンショックの1年後だったので、欧州人たちが最初からアメリカに腹を立てていた。しかも当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったオバマ大統領が、おっとり刀でコペンハーゲンに乗り込んできて、制限時間をオーバーして「シカゴ応援演説」をぶった。これが委員たちの癇に障ったらしい。つまり「あの子、最近ちょっと調子に乗ってるよね」的な場の空気で、投票が左右されてしまうのだ。だから「味方を増やすより、敵を作らない方が大切」と言われたりする。事前の読みはあまり当てにならないと心得ておくべきだろう。

2020年レースにおいては、当初はイスタンブールが有力とされていた。「イスラム圏で初の五輪」という大義名分は、それなりに重いものがある。ところがエルドアン政権に対する反政府デモが発生してから様子が変わる。「やっぱり時期尚早ではないか」という見方が強まり、ここから「安心、安全」を売り物にした東京が先頭に立つ。

ところが7月3日にスイス・ローザンヌで行われたプレゼンでは、スペインのフェリペ皇太子の熱弁がIOC委員の胸襟に沁みた。あのメッシ選手が、パレスチナで少年たちにサッカーを教えているというのである。これぞスポーツマンシップ。「メッシはスペイン人じゃなくて、アルゼンチン人だろう」などとは言いっこなしだ。13歳のリオネル・メッシ少年を発見し、スペインに招いて大選手に育てあげたのはFCバルセロナなのだから。

IOC委員の中には、さまざまな思惑がうごめいている。例えばフランス勢は東京支持と言われている。彼らの狙いは、最初のパリ大会から100周年を迎える2024年の五輪を誘致すること。それを考えたら、2020年はなるべく欧州から遠い東京にやらせる方が良い、という計算が働く。

他方、IOCは、スペイン人であるサマランチ会長の時代が長かった(1980年~2001年)。現在の委員の多くは、サマランチ前会長とサマランチ・ジュニア現理事の二代にわたるお世話になっていて、その義理もあるから「少なくとも1回目は、マドリードに投票する委員が多い」との観測もある。何しろ今回のIOC総会は、ロゲ現会長の後任人事や新競技の採用なども決めることになっている。委員たちの間で、どんな取引やら票の貸し借りやらが行われているか、ほとんど見当もつかない。

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