中国女性が普通に「飲み会」を楽しめない事情 日本のお酒を中国で大ヒットに導く秘訣
統計的に把握するのは難しいが、おそらく、同じカルチャーショックを受けた中国人留学生は多いだろう。
中国人に対して、「乾杯、乾杯!」と言いながら、50度以上の白酒〔バイチュウ、高粱(コーリャン)を主原料とする中国伝統の蒸留酒〕を一気に飲みきるイメージを持つ日本人は多い。
筆者が北京出身だと聞き、「北の女性だからよく飲めるだろう」と言われたことも数えきれない。実際、まず誤解しないでいただきたいのは、中国社会では「公共の場で女性は飲酒を避けることが常識」ということだ。
タトゥーがある人が温泉に入れないことが多い日本と同じように、中国にも旧来の価値観がまだまだたくさん残っている。たとえば、中国では女性は遅くとも30歳までに結婚・出産するのが当たり前だと思われている。化粧は「すっぴんで勝負できない人」や「男に媚びたい女性」だけがすることだという見方も、以前紹介したが、いまだに根強く残る考えだ(中国女性はなぜ「自撮り加工」に超必死なのか)。
日本よりも女性への「視線」が厳しい中国
そして、たばこを吸う女性やお酒を飲む女性はろくなものでない、と見る人が多いのだ。男女平等で共働きが普通になっている中国であるが、おそらく女性に対して「こうあるべきだ」という見方は日本よりも厳しい。
特にお酒を日本女性のように、パブリックな空間で平気で楽しく飲むことはめったにない。「喫煙と飲酒は水商売の女がすること」「人の目があるところで飲んだら、下品で教養がないと思われるよ」「営業などの女性が飲むのは仕事のため。そうでないなら女性が飲む意味はない」「お酒は女性の体によくない」……。中国は現在でもこうした価値観なのだ。
直接、親に言われなくても、中国の女性は、お酒との付き合い方に関して、こうした社会の「暗黙の価値観」の影響を受けている。「お酒は飲めますか」と誰かに聞かれたときの反応にもそれが表れる。実は家で少し飲むのだけれど、「下品」で「軽い」女だと思われないように、「飲みませんよ」と本能的に答える人が多いだろう。
つまり、中国においては、お酒を消費するのはほとんど男性だといえるのである。甘口で飲みやすい日本酒・果実酒は中国女性の口に合いそうだが、有望市場と見てアプローチしようとする際にも、味やデザインより前に日本企業が考えなければいけないのは、こうした社会環境だ。
次のような在日中国人の投稿を、SNSなどで毎年春になるとよく目にする。「飲み会って何?!」「新人研修の飲み会で疲れて体調崩しちゃった」「入学・入社のいちばんのストレスは夜の飲み会だ」「日本人は、なんでこんなに酔っ払うまで飲むんだ~。何が楽しいのかな?」……。こんな在日中国人の投稿を、毎春見掛ける。日本人に不可欠な「飲み会」は、中国人には実になじみがないものである。
そうはいっても、中国人の接待といえば、すぐに「酒」を連想する人は多いだろう。しかし、日本でいう「飲み会」とは、実はかなり意味合いが違う。中国ではお客様を招待するときに、こちらのおもてなしと誠意をどう見せるのかというと、すなわち「酔っ払う」「酔っ払わせる」ということになる。
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