中国女性が普通に「飲み会」を楽しめない事情

日本のお酒を中国で大ヒットに導く秘訣

一方、中国では先述のように、酒は接待のときにメンツを立てるための道具である。中華料理の場合、とにかくいちばん珍しく、高い酒を出すので、酒自体はおいしいとしても、当日の献立に合わせて酒を用意するという感覚は希薄だ。近年、ワインも非常に流行っているが、まだ飲み慣れていないことが多い。品種の違いとそれぞれのおいしさを理解するまで、時間がかかるので、しばらくの間、中国でワインの価値はもっぱら産地と値段とにあった。

そして、中国の名酒である白酒や紹興酒と日本酒を比較すると、中国のお酒は「年月を経て古いほうがおいしい」と評価され、一方の日本酒は一般的に「新しいほうがおいしい」といわれる。そのため、日本酒に関心を持ち、酒蔵にも行きたがっている中国人が増えてはいるが、造りたての酒がいちばんおいしいという考えをそもそも持っていない。

日本酒が中国で広まる可能性は十分ある

ただ、日本酒が中国市場でヒットし、定着するポテンシャルは十分にある。日本酒は水と麴(こうじ)と米でできているが、中国人は「麴」になじみがあるし、麴は体によいことはよく知っている(米P&Gの高級基礎化粧品ブランド「SK-Ⅱ」が中国で人気なのもその表れだ)。そのため、酒蔵ツーリズムは、体験型観光を求めるようになった訪日中国人、特に若い女性に関心を持ってもらいやすい内容だと思うし、今後、日本酒への理解も深まっていくことは、十分に期待できる。

ポイントは、日本酒ならではの「粋」なところをうまく伝えるところにあるだろう。職人の高い技術や、そして日本酒を含めた日本食文化の魅力を。そのためには、まず中国における酒のイメージと文化的背景が日本とかなり違うことを認識するプロセスが不可欠だ。

一見、中国人の若い女性を対象とする日本の酒のプロモーションは困難に見える。しかし、実際はそうでもない。

今の若者は、飲酒に関して伝統思想の影響を受けつつも、留学やインターネット経由の情報、海外ドラマや旅行等を通して、かなり寛容になっている。

特に女性の変化は大きい。今までの「いい子(親に従順な娘)がいちばん」という子供っぽい考えから、独立心が高まり、お酒の好みを通じて、自分らしさや自分のセンスのよさを示そうとする「大人化」の動きがある。これは、「飲みやすい」「度数が低い」「いろんな味わい方ができる」など、さまざまなニーズに応えられる日本のお酒の製造者や販売者にとっての好機といえるだろう。

ただし、特に中国市場をめぐるビジネスは、ワールドカップのような激戦であることは確かだ。すでに、中国ではかわいいデザインや色のパッケージなどで、女性に訴求する酒が発売されている。

今後、お酒でインバウンドの持続的な発展や新たな消費の核を作るためには何が必要になるのか。酒蔵ツーリズムを通して日本の酒文化への理解を深めてもらうのは、もちろん継続すべき有効な方策だ。そして、日本女性のライフスタイルまでも中国女性にもっと広めるなど、中国市場の特性を一段深くとらえた取り組みを進めることが、次の大きな一手になるはずだ。

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