「SK-Ⅱ」のCMに中国女性が感動したワケ 日本企業の中国向けビジネスには何が必要か
礼儀正しく、謙虚すぎるほどにいつも控えめ。それが、外国人から見た日本人像だ。「すごいですね~!」「本当にすばらしい!」とホンネで褒めても、「いえいえ」「とんでもございません…」と否定する。最初はそれに驚くのが普通だとしても、その奥ゆかしさを味わえるようになることが、やがて「日本通」となるために必ず通らなければならない道だと言われている(私も日本生活が長くなってきたものの、まだまだ慣れていないが)。
謙虚すぎるということでは、日本企業に関する報道もそうかもしれない。「中国事業は今年も業績不振」「中国からの撤退を検討」などネガティブなニュースに比べ、「中国市場で成功」「インバウンドで商機をつかんだ」というような前向きの話はずっと少なく感じられ、失敗を誇張しようとしているようにも思えてしまう。しかし、実際には中国市場に向けた施策が成功し、訪日する中国人や中国の現地消費者が好感を持っている日本ブランドはたくさんあると、日本で暮らし、仕事をする中国人の私は感じている。
これまでの連載を通じて「無印良品」や「カルビー」が中国の消費者の心をつかんでいる秘訣を探ってきた。今回は、高級基礎化粧品ブランドの「SK-Ⅱ」が、現在の20~30代の中国女性を魅了していることをご紹介しよう。米プロクター&ギャンブル(P&G)が展開するブランドだが、日本酒を作る杜氏の手の美しさに成分のヒントを得て、日本で開発されたSK‐Ⅱは"日本の化粧品"とみられており、中国で高い認知と好感を得ているのだ。
訪日中国人の化粧品購入熱は、今も高い
確かに、日本の百貨店のインバウンド売上高は、一時の勢いを失って減少傾向にある。ただ、その中でも堅調を維持しているのが化粧品。百貨店を訪れると、にぎわいがあるのは訪日中国人に人気の高い化粧品ブランドのカウンターだ。もちろん、化粧品なら何でもよいというわけではない。わざわざ日本で買わなくてもいいブランドや知名度が高くないブランドのカウンターは閑散としていて、勝ち負けははっきりとしている。
その中でSK-Ⅱは、まさに常勝だ。一昨年から50人以上の訪日中国人女性に対面インタビューを行ったが、ほとんどの場合、日本で買いたい化粧品ブランドのひとつとしてSK-Ⅱが出てくる。ほかの人気ブランドは、台湾や香港の有名人の間で評判になったことで、はやるようになったものや、日本でしか買えない日本ブランドだが、SK-Ⅱだけは中国本土にも店舗があり、普段から高級化粧品としてよく知られている。ただ、日本で買うほうが安く、扱う商品に定評のある百貨店やドラッグストアで手に入れられるために、やはり訪日中国人の需要があるのだ。高級化粧品としてのブランドは価格と品質で確立してきたものだが、加えて最近は、中国国内で流した2つのCMの"ヒット"もあり、消費意欲をいっそう押し上げている。
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