中国女性が普通に「飲み会」を楽しめない事情 日本のお酒を中国で大ヒットに導く秘訣
珍味と高価な酒(ほとんど白酒)を出し、いっぱい勧め、値段とアルコール消費量で"勝負"する。お互いに酔っ払ってから、初めて「友達」になる。つまり、酒は、味より、珍しさと値段も含めた舞台装置であり、相手に互いの本心を見せ合おうとする際に使う一種の道具にすぎない。
逆に、本当の友人と一緒にいるときには、このような演技と道具は要らない。「食こそ至上」の中国人にとって、飲み物の存在感は意外なほど薄い。要はビールでもお茶でも、なんでもいいのだ。集まる目的は、グルメとおしゃべりだ。
特に若い女性の「女子会」だったら、SNSで話題になっているレストランに行き、「顔値(見栄え)」が高い料理の写真を撮ってアップするのが定番であり、料理は自撮りに欠かせないアクセサリーのような存在にもなっている。
中国でも男性同士だったら、ビールや白酒でワイワイやることもある。だが、ここまで述べてきたような社会の価値観から、女子会は「食事会(自撮り会)」であることが一般的であり、やはり「飲み会」ではないのだ。
最近の日本の飲み会は、お互いにそこまではお酒を勧めない風潮なので(例外もあるが)、マイペースで飲めるし、高い度数のアルコールもあれば、ジュースみたいな果実酒もあるので、自分の好みで選択できる。つまり、ある意味で「飲めない人」に優しいスタイルである。
それに対して、中国の場合は"勝負"でもあるのでいっぱい飲むほかなく、しかも飲むお酒の選択肢が限られていて、高い度数のものばかりである。これが中国人女性がアルコールになじんでいない一因だろう。
中国でもお酒の味わい方に変化の兆し
そのような中国でも、日本食ブームに伴い、美味しい料理の「パートナー」である日本のお酒の魅力もじわりと注目度を上げてきている。中国のSNS投稿や訪日中国人観光客へのインタビューを見ると、5、6年前は「清酒(中国での日本酒の呼び方)」の存在自体を知らないのも普通だったのが、今では「清酒」ではなく「日本酒」に呼び名が変わり、さらに「梅酒」「焼酒(焼酎)」などの固有名詞もよく出てくるようになってきた。
ちなみに「梅酒」は中国人女性にいちばん人気で受け入れやすいお酒だろう。甘くてジュースみたいだし、梅を使った料理や飲み物は中国にも昔からあるので、なじみがある。筆者が勤務する三菱総合研究所の日本の3万人を対象とした生活者市場予測システム(mif)の調査によると、近年、日本女性の間では、飲みやすくて甘いといった特徴を持つ「女性向けの酒」より、ビール・チューハイなど「男性向けの酒」の人気が高まっている。中国人女性は、昔の日本人女性に近い嗜好を持っているということになる。
日本料理は季節・風土に合わせ、「旬」の味や「地元感」を醸し出すのが特長だ。酒は、その料理の一部であり、料理を引き立てる存在でもある。出来たての地酒は「今、ここでしか味わえない」ところに高い価値がある。
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