19歳でプロ野球選手に嫁いだ妻の波瀾曲折

巨人のスター「松本匡史」をいかに支えたか

出会った当初は遠征帰りでスーツを着用していた匡史さんを見て「おじさんだなぁ」という印象だった由佳さんだったが、匡史さんの不器用な熱意に、心はしだいに動かされていった。出会って1カ月、18歳の短大生とプロ野球選手の交際が始まった。

交際から2カ月後、由佳さんは匡史さんからある思いを込めた手紙を受け取る。

前略 由佳様
由佳と知り合ってから、3カ月ほどだけど、もう2、3年は付き合っている気がする。由佳が、俺の嫁さんになってくれることが、どんなに幸せであるか、毎日のように、考えてしまう。
遅くともシーズンオフには、プロポーズするつもりだから、覚悟しておいて。最後に、わかってほしい事が、ひとつだけある。それは、由佳を、誰よりも愛している。
匡史より

 

手紙での突然のプロポーズに由佳さんは驚き、戸惑ったが、口数の少ない匡史さんが、文字に込めた熱烈な思いは、19歳になった由佳さんの心を、激しく揺さぶった。38年前のその手紙を、由佳さんは、今も大切にしている。

巨人への入団で、由佳さんという大切な人と出会えた匡史さん。もし長嶋さんが巨人へ強引に誘わなかったら、2人の出会いはなかったかもしれない。

肩を脱臼するケガで大手術へ

「早く一流選手になって、由佳さんを幸せにしたい」。そんな思いで、野球に打ち込んだ当時の匡史さんだが、巨人でレギュラーの座をつかむのは、並大抵のことではなかった。加えて、3年目のシーズンに挑もうとしていた矢先、匡史さんに悪夢が襲いかかった。守備練習で肩を脱臼してしまったのだ。

実は、匡史さんには大学時代から脱臼癖があり、それがプロ入りをためらっていた理由の一つでもあった。ふとした拍子に関節が外れてしまう脱臼は、プロ野球選手にとっては致命傷。これを治すには、手術しかなかった。それも腰の骨を削り、肩に移植するという難しい術式だった。当時はまだスポーツ医学が発達しておらず、手術に失敗すれば野球ができなくなるおそれもあった。

「治らなかったら、プロ野球選手ではいられなくなる。そんな状態で、まだ19歳の彼女との結婚など、許されるのか?」。匡史さんには不安だけが、膨らんでいった。

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