26歳でプロ野球「戦力外」の男がつかんだ奇跡 海を渡った中後悠平は夢舞台への扉を開いた
「お前自身があきらめるな!!」
今年8月3日、朝6時。カリフォルニアのだだっ広いハイウェイを、真っ青な空の下、レンタカーでぶっ飛ばして空港へと急ぐ。睡眠2時間で明らかに目は充血していたが、中後悠平のテンションは高かった。日本から持って来ていた曲をフルボリュームで流す。
「これ、いい曲っすよ」
そう言って選んだのは「Don’t Give Up Yourself !!」(HAN-KUN)、かつて千葉ロッテ時代に自身が登場曲として使用していたもの。まさに中後の今の心情そのものだ。
向かう先は900キロ離れたユタ州ソルトレイク。10カ月前に日本のプロ野球で戦力外になり人生のドン底にいた男が、メジャーリーグの一歩手前、3Aに緊急昇格を果たした。「いっそ全部変えちゃうくらい」の夢物語が目の前でまさに起きようとしていた――。
2015年の年の瀬。風物詩ともなったテレビ番組「プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達」で映し出された中後の姿はあまりにも無惨だった。
一縷の望みを託して受けたトライアウトのマウンド。打者3人に対し、四球、死球、死球と、アウト1つすら奪えずに降板。カメラを向けるには残酷すぎる結末に「絶対結果を残さないといけないところでいちばん悪い結果になりました。やっぱり情けないし、悔しいし。これが僕の限界です…」と、ただただ俯くしかなかった。