26歳でプロ野球「戦力外」の男がつかんだ奇跡 海を渡った中後悠平は夢舞台への扉を開いた
朝6時。カリフォルニアのだだっ広いハイウェイの車中で「Don’t Give Up Yourself !!」(HAN-KUN)を流し、自らの姿に重ね合わせるように口ずさむ。
中後の妻も、向かう先を1A(ハイA)から3Aに急きょ変更。乳飲み子を抱きかかえ、海外の不慣れなトランジットを経て夫のもとへ駆けつけた。
13試合連続無失点という完璧な出来
かくして中後の初登板は愛する妻と息子の目の前となった。結果は1回1/3を投げて3三振、無失点と上々の出来。鮮烈のデビューとなった。
中後はその後の試合でも快投を続け、13試合連続無失点という完璧なピッチングを演じた。終わってみれば3Aでは1点すら与えることなく、メジャー目前のところで2016年のシーズンを終えて帰国したのだった。
今回この原稿を書くにあたって「Don’t Give Up Yourself !!」の曲を軸にして描くつもりだと伝えると、「いいですね! 今年の想い出が詰まってますからね!」と嬉しそうに笑ってくれた。そんな彼はシーズンオフもトレーニングに明け暮れ、年末年始だけ束の間の家族水入らずの時を過ごせるという。
1年前とは真逆の気持ちで、新たな年を迎える中後。来るシーズンは、ダイヤモンドバックスのメジャーキャンプに招待選手として呼ばれる見込みだ。果たして、この男にどんな次なるストーリーが待ち構えているのだろうか。歌詞のように「涙モンの人生ドラマ」を体現すべく、2017年、中後が再び海を渡る。
(敬称略、文:津川晋一/ディレクター・スポーツジャーナリスト)
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