石原都政に新たな火種 過去最悪の土壌汚染で揺れる築地移転問題
世界最大級の水産物取扱量を誇る東京・築地市場。外国人も多く訪れる観光名所だが、東京都は2013年に豊洲への移転を決定している。石原慎太郎知事は築地跡地を、16年開催をもくろむ「東京オリンピック」のプレスセンターとする青写真を描く。しかし移転先の東京ガス跡地から環境基準を大幅に上回る汚染物質が検出されたことで、計画に反対の声が上がっている。
7月26日、東京都が汚染対策の検討を委託する「専門家会議」は、最終報告書をまとめた。座長を務める和歌山大学の平田健正教授は「報告書の対策を実施すれば、人体の健康や生鮮食品に影響を及ぼす可能性は低い」と結論づけた。
その報告書には大規模な対策が盛り込まれた。予定地約40メートルで地下2メートルまでの土壌をすべて入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする。入れ替える土砂は約180万立方メートルと、東京ドームの1・5倍。2メートルより深い汚染土壌も環境基準以下に処理される。地下水は排水基準以下に処理され、長期的には環境基準以下を目指す。また、汚染物質の移動を防ぐため、地下水を地下2メートル以下に抑えるなどの対策も考えられている。
当初予定していた費用は670億円だが、これを大幅に上回るのは確実だ。土壌汚染対策の国内市場規模が2000億円と言われる中、「日本最大規模となる。かなりの額が予想される」(平田座長)。
徹底した対策に見えるが、専門家会議への批判は少なくない。日本環境学会の畑明郎会長は「地下水の浄化は時間がかかるため容易でない」と指摘。「もし震度5以上の地震が起こったら、液状化するおそれがある」という。汚染地下水が漏れ出ると「毒性の強いシアン化合物で市場はパニックになる」と懸念する。