ベトナム原発計画中止で無視される「民意」

史上最悪の海洋汚染事件と重なる「構図」

ベトナムでは国家プロジェクトにさまざまな利権が絡み合う。建設費がGDPの1割超に膨らんだ原発計画は、彼の失脚とともに巨大利権の損得勘定をめぐって見直しが決まったのかもしれない。

「環境」は新しいビジネス

原発中止の理由で、一部でささやかれた外資企業フォルモサ社が昨年起こした「ベトナム史上最悪の公害」との関連についても小高さんは言及する。

「対外的に相当なリスクがあっても原発を中止にした。少なくともフォルモサとか、環境問題とはあまり関係ないでしょうね」

ただ、近年ベトナムでは、開発計画の中に「環境に配慮した」という言葉をよく目にする。火力発電なら「環境に配慮した石炭」、水産養殖なら「環境に配慮したエビ池」などなど。現地で長年活動を続ける環境NGOの関係者に聞くと、

「最近は環境問題絡みは国際機関から予算が出やすい。国と役人たちにとって、『環境』は儲かる新しいビジネス」

と返ってきた。

看板には「気候変動に対応したマングローブ植林」。環境保護は海外からも注目される案件だ

世界銀行やアジア開発銀行、各国のODA(政府開発援助)、民間の投資会社に援助団体などから、再生可能エネルギーや植林事業、温暖化対策といった環境分野には大きな資金が流れ込む。海外投資案件に国と役人が関与するベトナムなら、巨大な利権もそこに発生するということだろう。

昨年の「ベトナム史上最悪の公害」にも、政府とフォルモサ社の間ですでに5億ドルの賠償金を含んだ示談が成立している。この金額は一企業に課す罰金としてはベトナムでは最高額らしい。ベトナム政府は2014年に新環境保護法を制定するなど、「環境」を考慮した法令整備と罰則強化を進めている。被害規模もさることながら、「環境」絡みの企業責任にはいまや高値がつく。そして、原発中止の理由にも「環境に配慮した」は使われていた。

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