「株主資本主義」以外の選択肢は存在するのか 永野健二氏と村上世彰氏が語る資本主義の今
村上:バブルの頃の1990年、日本企業の内部留保すなわち純資産は合計で二百数十兆円しかありませんでした。それが今、500兆円に近づいています。デット(銀行からの借り入れや社債など有利子負債)がその分減りました。今はデットが300兆円強です。
永野:それはまったく同意。同意だけど、要するに、中央銀行のバランスシートの悪化と、民間の事業会社のバランスシートの改善はほぼパラレルだと。
村上:民間企業の内部留保をバブルの頃の200兆円台に戻すと、マネーサプライは劇的に改善するのではないでしょうか。
永野:そうかもしれない。カネは天下の回りものだ。
村上:はい。
「日本一の投資家は私ではなく孫さんです」
――ソフトバンクグループの孫正義社長をどう見ていますか。
永野:孫さんとは親しい?
村上:1、2回お会いしただけです。
永野:孫さんは村上的生き方を認識したり、評価している?
村上:孫さんは誰を評価するとかじゃなくて「自分の考えはこうだ」っていうのを(ひたすら)言っている方だと思います。投資案件は1回しかやったことありません。それはそうとソフトバンクの格付けは低いですね。
永野:低いのは昔からでしょう。ITバブル崩壊後、ダブルBだった。ダブルBというのは機関投資家投資不適格。一般論で言うと危ない会社。格付けについては総じて変わってない。年率2%ぐらいの利回りで発行して、ゼロ金利の中で個人に銀行の信用で売っている。これは公平なのか、正しいことなのか。たばこなら「健康に良くないかもしれません」とか書いてある。リスクを表示している。
村上:投資リスクは目論見書にすべて書いてあるのではないでしょうか。
永野:目論見書に書いてあるけども、それを読んで買っている個人はどれだけいるだろうか。ソフトバンクが潰れなかったのは、1995年に野村證券から来た北尾吉孝氏(現SBIホールディングスCEO)のおかげ。北尾氏が辞めた2000年ぐらいから孫さんは実業家になった。
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