「株主資本主義」以外の選択肢は存在するのか 永野健二氏と村上世彰氏が語る資本主義の今

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村上世彰(むらかみ よしあき)/1959年生まれ。1983年東大法学部卒、通商産業省(現経済産業省)入省。1999年M&Aコンサルティング(通称村上ファンド)設立。昭栄、東京スタイル、阪神電気鉄道、ニッポン放送へ投資。2006年インサイダー取引容疑で逮捕。11年執行猶予付き有罪判決確定。現在はシンガポールに在住。自己資金で海外中心に投資活動を展開。著書に『日本映画産業最前線』『市場「淘汰」されるサービス業 顧客「選択」されるサービス業」。6月下旬に久々の自著『生涯投資家』を刊行した(撮影:今井康一)

永野:それはこの30年くらいで変わった最も大きなことかもしれないが、本当にいちばんいいことなのかどうか。一方で、日本にはまだ株式の持ち合いが残っている。

村上:持ち合い関係を残したければ上場をやめればいいのではないでしょうか。それなのに上場をやめません。

永野:たしかに、いいとこ取りだ。

村上:上場をやめるのか、それともフェアに自由な株主に議論していただくのか。これらの2択しかないと思います。株式を上場している以上は株式の売買が自由にできる時代が来ます。その典型が今回のKKRによる買収です。日立工機やカルソニックカンセイの株をKKRが買いました。そういう時代に突入したということだと私は思います。

永野:護送船団型の銀行行政、持ち合い型の資本主義からファンド資本主義にようやく移行したと。

誰が配当政策や資本政策を決めるのか

村上:ファンドかどうかは別にして、既得権益者だけが自分で勝手に決めるというのは駄目だよというのは、経済産業省や金融庁が音頭をとっている。「持ち合いはやめよう」「これからは自由な株式売買をしよう」というのを「伊藤レポート」だとか「コーポレートガバナンスコード」に書き記したわけです。「今の株主か、過去の株主か」という話に戻りますと、誰が配当なり資本政策なりを決めるのかというと、それは株主です。「その時の株主」は「その時の議決権」を持って「その時の株主総会」で決めていきます。そういうルールになっています。過去の遺産も含めて今のプライス(=株価)が付いているのです。

永野:そうだね。

村上:そこは仕方がないことだと思いませんか。

永野:村上さんと話していて私がすとんと落ちないのは、経営者資本主義がいいのか、株主資本主義がいいのかという点だ。

村上:株主資本主義以外の選択肢って本当にあるのかな、と思います。経営者資本主義なら「どうぞMBO(Management Buyout)してください」ということになると思います。

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