「株主資本主義」以外の選択肢は存在するのか 永野健二氏と村上世彰氏が語る資本主義の今

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――村上さんはかつて「金儲け、悪いことですか」と発言し日本社会に物議を醸しました。

永野:武富士の創業者・武井保雄氏(故人)が長男・武井俊樹氏に生前贈与した海外資産に国税庁は1330億円を課税した。これは僕も含めて国民的には絶対やるべきだと思うことだ。しかし裁判で結果的に負けた。

村上:国が負けました。

永野:国がね。それに加担する法律、加担する弁護士ってなんなんだろう、と今でも思っているところが私にはある。

村上:日本は法治国家ですから、(「国民感情的に許せないから有罪にする」というのは)たとえば「お前は俺に文句を言った。俺が政権を取ったらお前を死刑にする」という論理と一緒ではありませんか。

日本社会が根差しているのは水戸黄門的な世界観

永野:欧州で発展した法治国家という概念はたかだか数百年の歴史。未来永劫変わらない価値なのかどうか。それに、金持ちをつくる社会は「大衆的に人気がないな」と。日本社会が根差しているのは水戸黄門的な世界観なのではないか(笑)。

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村上:資産のボーダーレス化と貧富の差の問題については、金持ちに資産課税をするのも一案かもしれません。私のほうから『バブル』の著者の永野さんに質問です。『バブル』はとてもいい本です。資産バブルがはじけた時、日本はどう対処すべきだったのでしょうか。

永野:バブル崩壊直後に「本当に戦後が終わったな」と思った人がどれだけいたかどうか。1992年には土地の価格が壊れ始めて、5倍に上がったのが5分の1になったのだから、放っておいたら銀行は全部つぶれる。それを確信を持って思っている人が当時あまりにも少なかった。「すぐさま公的資金を投入するくらいの大きな危機だな」と私は思っていた。土地本位制の護送船団行政が本当に終わったんだと大蔵省(現財務省)も含めて考えるべきだった。1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、それから2008年のリーマンショックと見ていくと、グローバリゼーションで国境が溶けていくと同時に資本主義は、どんどんどんどんぐじゅぐじゅになっている。

村上:「ぐじゅぐじゅ」というのはどのような状態のことですか。

永野:ぐじゅぐじゅというのはどんどん緩んでるなと。有り体(てい)に言えば資本主義の金融化かもしれない。一方で、アダム・スミスが『国富論』で描いていたような国民国家をつくる力はどんどん衰えている。

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