異色対談!「村上世彰氏vs伊藤邦雄教授」 ROE8%以上達成で日本を変えろ

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投資家と研究者で立場は違うが、両者の主張には共通点が少なくない(撮影:梅谷秀司)

旧通商産業省(現経済産業省)を辞した村上世彰氏が投資会社M&Aコンサルティング(通称・村上ファンド)を立ち上げたのは1999年8月のことだ。村上氏は昭栄や東京スタイルに投資。「会社の資産を有効活用していないのは経営者の怠慢」「使う予定のない内部留保は株主に返すべき」と主張した。株式を持ち合うなど旧態依然の経営をしていた日本企業への問題提起になったものの、2006年のインサイダー取引容疑による村上氏逮捕で後退。村上ファンドの主張は忘れ去られた。

『週刊東洋経済』6月5日発売号(6月10日号)では8ページにわたって対談を掲載。本記事はそのうち一部を抜粋したものです。ご関心のある方は雑誌をお買い求めください(雑誌表紙画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

だが、逮捕から8年後の2014年8月。かつて「異端」だった村上氏の主張は世の中の本流へ躍り出る。伊藤邦雄・一橋大学教授(当時。現同大特任教授)が座長を務めた経済産業省の研究会で、最終報告書の通称「伊藤レポート」は、「グローバルに通用する指標はROE(自己資本利益率)。グローバルな投資家に認められるために8%を最低限上回るROE達成に企業経営者はコミットする(=責任を持つ)べきだ」と提言。日本の経済界に大きな反響を呼び、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の指針と位置付けられた。

18年前にファンドを設立した村上氏と、25年前から資本コストやコーポレートガバナンスの重要性を指摘してきた伊藤氏。投資家と研究者で立場は違うが、両者の主張には共通点が少なくない。

ROE8%を掲げて度肝抜いた伊藤レポート

――3年前に公表した「伊藤レポート」はROEを強調しました。その意図はどこにあったのですか。

伊藤:日本企業の株価水準と収益性が四半世紀にわたって低迷を続けたという危機的ともいえる「不都合な現実」に目を向けたことにある。日本企業の経営者は「市場」というと製品やサービスの市場を思い浮かべるばかりで、株式市場への目配りが当時薄かった。資本生産性の話をすると「それって何?」となる。

ところが資本市場と上手に会話できなければ、資本獲得競争に負けてしまうという現実がある。株式市場や投資家に迎合することなく、投資家が関心のある指標をKPI(Key Performance Indicators。経営者がコミットする指標)にしないと、日本企業は立ち後れる。そんな危機感があった。日本社会では「投資家と経営者の関係は本来敵対的な関係だ」と先験的に思い込んでいるが、その固定観念を壊したいという思いもあった。

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