今回のコラムで申し上げたいのは、作り笑顔の我慢や子どもの気持ちへの過剰な忖度(そんたく)をするのではなく、親が一生懸命生きている姿を見せることこそが、子どもにとって最高の教育だ、ということです。
さおり様が東京へ出る際のいちばんのネックが、敏感なお嬢様が環境の変化に耐えられるかどうかなのですね。しかしあなたが心機一転、責任感とやる気満々の元気な母親に変身するなら、むしろ子どもさんたちにも歓迎すべき環境の変化となるのではないでしょうか。
あなたは不誠実な夫に悩みながら、手がかかり、しかも反抗期の子どもさんたちをむなしい気持ちで、一人で育児されているとか。ところであなたの虚無感やイライラ、夫のことで悩んでいる内面は、子どもの前では見せていないつもりでも、子どもなりに敏感に感じ取り、心を痛めている場合が多いものです。
今の状態が子どもにとって、ベストな母親や環境とは限りません。むしろ養育者の無理な過保護や過剰な子どもへの忖度が、子どもの精神力をか弱くしたり、甘えた思考方式の子どもに育てた例を思い起こすべきです。
今のうちに子どもを安全な船に乗り換えさせるべき
生涯自分本位で、親への思いやりのない子どもほど、親が無理して無菌状態のようにして育てた場合が多いものです。子どもを思う気持ちはわかりますが、過保護、過剰反応は禁物です。
確かに親が転んでも子どもは転ばないどころか親を反面教師に、またはその生き方を教訓にして立ち上がった子の例は、枚挙にいとまがありません。一概には言えませんが、このような反面教師となった親が、結果的に子どもたちをたくましくし、早い時期から子どもに自立心を芽生えさせています。極端なようにみえて、これは珍しくない例です。
以上のように、あなたの今の事情で子どもを腫れものを触るように気づかい、何も行動を起こさないのは、逆に子どもをスポイルしてしまう可能性もあり、ベストな選択とは限りません。
まして今あなたは難破船の船長で、船長自身が病む寸前です。今のうちに2人の乗組員を、安全な船に乗り換えさせる責務があります。船長の判断ミスの先に待っているのは、乗組員もろともの遭難だけです。
社会で働くということは、収入を得る以外にも、さまざまな収穫があります。定年になって「生きがいを失った」と嘆く多くの人と、転職を重ねて仕事上のチャレンジを続ける人や、90代でなお現役の作家その他の有名人の幸福そうな表情や活躍と比較しても、それは容易に想像がつくことです。
若いあなたが今の状態にとどまることは、自身のさらなる成長をあきらめ、より大きな幸福の追求をあきらめることです。
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