「自立する力」を相続できない子が貧困になる 運命を分ける「非認知能力」の向上を支援せよ

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貧困の連鎖を招いている原因とは(写真 : Graphs / PIXTA)

貧困の連鎖はどのように起きているのか

前回の記事(「子供の貧困」は約43兆円の所得を吹き飛ばす)では、子どもの貧困の社会的損失を推計するために、「進学率や中退率を改善することで所得が向上する」という日本の社会構造を前提に話を進めてきた。しかし、さまざまな当事者たちにインタビューを行った結果、進学1つとっても学力以外の要素が大きな影響を及ぼしていることがわかってきた。いったい、子どもの貧困問題、なかでも貧困の連鎖は、どんな構造によって起きているのだろうか。

そこで大きなヒントとなるのが「社会的相続」という概念である。社会的相続とは、明確に定義されていないが、「『自立する力』の伝達行為」と理解していただくのが良いと思う。ポンペウ・ファブラ大学政治社会学部教授のエスピン=アンデルセンは、「社会的相続は、所得と同等かそれ以上に重要である」と指摘している。

こちらの図表は、社会的相続を概念図化したものである。親は子に対し、将来必要な自立する力をさまざまな形をともなって伝えていく。子どもにかけるおカネ、子どもにかける時間、親の周囲との関係、親の生活習慣、親の価値観などだ。もちろん、社会的相続の担い手は親だけではなく、親族や近所の大人、学校の先生や施設職員などの場合もある。子どもはこれらを通じて、自立に必要な力を適正に、または歪んだ形で引き継ぐ。この社会的相続は、家庭の経済状況等によって差が生じると、筆者たち(日本財団子供の貧困対策チーム)は考えている。

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