「子供の貧困」は約43兆円の所得を吹き飛ばす 国民全員の生活を破壊するメカニズムとは?

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「子供の貧困」を放置した場合にどうなるか?そのシナリオを分析する(写真 :wattanaphob / PIXTA)

「子どもの貧困」は日本にも存在する

「子どもの貧困」と耳にすると、どこか遠い国の話題と感じる読者が多いかもしれない。しかし、子どもの貧困問題は経済大国日本においても確実に存在しており、拡大しつつある。

現状を紹介するために、わかりやすいデータをいくつか示すところから始めたい。わが国の子どもの貧困率は上昇傾向にあり、2012年は16.3%となっている。すなわち、6人に1人の子どもが貧困状態にある計算となる。子どもの貧困率とは、相対的貧困状態にある17歳以下の子どもの割合を指す。相対的貧困とは、貧困ラインに満たない暮らしを強いられている状態である。親1人、子2人のような3人世帯の貧困ラインは、約207万円となっている。

ここで読者は不思議に思うかもしれない。「207万円もあれば暮らせないこともないだろう。仮に6人に1人の子どもが貧困状態にあるとしても、自分の周りにそんなに貧しい子どもはいない」と。まさにこの感想に、わが国の子どもの貧困問題の難しさがある。一般の方々が考える「子どもの貧困」とは、食べるものに困り、着るものも満足にない、外見から判断して「明らかに」貧困とわかるような子どもである。いわゆる「絶対的」な貧困である。

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