「子供の貧困」は約43兆円の所得を吹き飛ばす 国民全員の生活を破壊するメカニズムとは?
実は筆者自身もひとり親家庭で育っている。私が12歳の時に両親が離婚し、相対的貧困ラインぎりぎり、もしくは下回るような生活水準であった。母、弟との一家3人の生活に経済的な余裕はまったくなく、衣食住に事欠くことはなかったものの、経済的な事情によってさまざまなものを我慢せざるをえなかった。周囲との比較で幾度もみじめな思いをしたのを記憶している。
将来に期待することが難しくなる
経済的な制約が長期間続くことにより、現実的な思考しかできなくなり、将来に期待するのは難しくなる。生まれた環境によって将来が決まってしまうのだ。そんな子どもが、日本には数多くいる現実を直視してほしい。とはいえ、こんな感想を持たれた方も少ないと思う。「貧困状態にある子どもは意外に多いらしい。ただ、自分の周りにはそんな状態の子どもは6人に1人もいない。だから、やっぱり実感が湧かない」と。当然である。自分自身に関係してこないかぎり、どんなに深刻な問題でも実感が湧かないものである。「ジブンゴト」として捉えられないのである。
そこで、子どもの貧困問題をより「ジブンゴト」にしていくために、日本財団子どもの貧困対策チームが考えたアイデアが、子どもの貧困が与える経済的影響の推計である。
経済の問題は誰にとっても重要な問題であることは議論をまたない。経済にマイナスの影響があれば、あなたの給料が減るかもしれないし、給料が減れば支払う税金・保険料も減少するため、政府財政にもマイナスの影響を与える。子どもの貧困問題を放置することによって、貧困の連鎖がこのまま拡大すれば、貧困層が増えることで国内市場が縮小し、政府財政にも影響を与えることが予想される。
0~15歳の子ども全員を対象として推計を行うと、所得の減少額は42兆9000億円、財政収入の減少額は15兆9000億円に達することがわかった。2016年度の日本の国家予算(一般会計)は約97兆円である。また、2014年度の日本のGDPは約490兆円である。
つまり貧困状態に置かれた子ども全員が現状のまま放置されてしまうと、国家予算の約半分、GDPの約1割に匹敵する巨額の社会的な損失が将来発生してしまうのである。こうした推計を目にすれば、とてもではないが「ジブンゴトではない」とはいえないだろう。
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