「子供の貧困」は約43兆円の所得を吹き飛ばす 国民全員の生活を破壊するメカニズムとは?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかしながら、日本でそうした貧困はあまり見ることはない。日本における貧困問題は、あくまで「相対的」な貧困である。とはいえ、生活費の高い都市部において、親1人子2人が17万円で生活するというのは決して簡単なことではなく、生活に余裕はない。2014年の総務省家計調査によれば、大都市部の2人以上の世帯の平均消費支出は約30万円である。月収17万円の場合、最低限の衣食住は満たされるかもしれないが、教育や将来への投資を行なうことは難しい。その結果、彼らの将来の選択肢が狭められ、貧困の連鎖に陥る可能性を高めている。

では、国際的に比較するとどうなのであろうか。国内総生産でみれば、世界第3位の経済規模を誇る日本である。多くの読者は、日本は他国より貧困率は低いとお考えかもしれない。しかし、日本は34カ国のうち上から10番目と高く、OECD平均を上回っている。お隣の韓国はOECD平均を下回っており、子どもの貧困率は下から11番目である。

ひとり親家庭の貧困率はワースト1位

子どもの貧困は子ども自身が貧困なのではなく、家庭の貧困によるものである。そこで、ひとり親家庭の貧困率をみると、日本は50.8%となっており、OECDでワースト1位だ。

一方で、日本のひとり親の就業率は母子世帯で81%、父子世帯で91%となっており、アメリカ74%、イギリス56%等と比較しても高水準にある。就業率が高いにもかかわらず、貧困率が高い背景としてひとり親、特に母子世帯の収入が一般世帯に比べて低いことが挙げられる。2011年度の全国母子世帯等調査によれば、母子世帯の平均年間就労収入は正規職員で270万円、父子世帯の場合は426万円という結果となっている。男女間の賃金格差、職場復帰を促す社会インフラの不足等という社会構造的な問題が母子世帯をめぐる経済状況を厳しくしている。日本では離婚等で母子世帯になった場合、高い確率で貧困状態に陥りやすいのが現実だ。

ここまでは日本において子どもの貧困問題が存在し、いかに深刻であるかをさまざまなデータを引用し、紹介してきた。経済大国というイメージの強いわが国で、子どもの貧困がこれほどまでに蔓延していることだけでも驚きかもしれない。しかし、わが国における子どもの貧困問題で最も重要なのは、貧困が世代を超えて「連鎖」していることである。お茶の水女子大学が2014年に世帯収入と子どもの学力の相関関係を分析した結果によると、世帯収入は子どもの学力と非常に高い相関関係にあるという。

次ページ収入の差によってもたらされる学力の差
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事