「子供の貧困」は約43兆円の所得を吹き飛ばす 国民全員の生活を破壊するメカニズムとは?
当然ではあるが、世帯収入の差によってもたらされる学力の差は、学歴の差として現れる。生活保護世帯・児童養護施設・ひとり親家庭の進学率・就職率を全世帯平均と比較すると、高等学校等進学率はどのカテゴリーも90%以上であり、大きな差はみられないが、大学等進学率(専修学校・短大含む)では全世帯平均が73.3%であるのに対し、ひとり親家庭は41.6%、生活保護世帯に至っては32.9%と半分以下の数字となっている。
やはり大卒はまだまだ有利だ
学歴の差は収入の差となって現れる。2015年賃金構造基本統計調査によれば、男の場合、大学・大学院卒のピーク時の賃金月額が約54万円であるのに対し、高卒では約35万円と1.5倍以上の開きがある。また賃金カーブにも大きな差が現れており、生涯年収で考えると大学・大学院卒と高卒では大きな差が生まれる。
これらのデータから、「生まれた家庭の経済格差が教育格差をもたらし、将来の所得格差につながっている」ことが推測される。
では、貧困の連鎖は実際にどのくらいの規模で起きているのだろうか。全国の実態を把握できるようなデータはないものの、関西国際大学の道中隆教授による調査によれば、ある自治体では生活保護を受けている世帯主の4分の1が、生家でも生活保護受給歴があり、母子世帯ではこの割合が約4割にもなるという。ひとたび貧困層になると、世代が交代しても抜け出すことがいかに難しいかがわかっていただけると思う。
ちなみに、「生まれた家庭の経済格差が教育格差をもたらし、将来の所得格差につながっている」という傾向は貧困層にだけ当てはまるものではなく、当然ながら高所得層についても同様の傾向が確認されている。東京大学学生生活実態調査(2014)によれば、東京大学に通う学生の家計支持者のうち、54.8%が年収950万円を超えているという。衝撃的な数字である。
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