豊島区議会で「2つのパワハラ防止決議」の怪 小池都知事の地元で何が起きているのか
そして自民党案については民主ネット豊島区議団と公明党豊島区議団が退席したため、22人中12人の賛成で可決し、共産党案については全会一致で可決した。
ここで興味深いのは、共産党と都民ファーストの会が足並みをそろえている点だ。その背後には昨年7月の都知事選からの因縁がある。
次期都議選で小池知事は自民党の議席を1議席でも多く減らすことを最大の目標に掲げているが、中でもとりわけ重点区としているのが地元である豊島区。というのも、自民党の堀宏道都議は東京都連の方針に従って小池氏を応援しなかった。
その恨みが残っているのだろう。ずいぶん前からこんな話が聞こえている。「自民党の堀を落選させるため、ファーストから共産党に票が流される」。豊島区は定数3だが、断トツに強いのが小池知事が率いる都民ファーストの会。共産党の米倉春奈都議は現在のところ下馬評で4位となっている。
共産党にとって豊島区は特別な意味
しかしながら共産党は、米倉都議を絶対に落せない。4年前の都議選で25歳の若さで当選した米倉氏はいわば共産党の星。しかも豊島区には共産党東京委員会が今年3月に移転したばかりで、新しい根拠地で負けるわけにはいかないからだ。
さらに米倉氏は高野区長のお気に入りという点も見逃せない。今年の区長主催の賀詞交歓会では、共産党議員として異例にも乾杯の音頭をとった。そもそも高野区長は希望の塾で講師を務めるなど、小池知事とも極めて近い。
そうなれば割を食うのは公明党になるかもしれない。実際のところ、公明党は危機感を募らせている。中でも最も気になるのが参議院選の比例区での投票数だろう。豊島区内の公明党の得票数は約1万3000票でほとんど変わらないのに対し、共産党は2010年では1万0439票だったが、2013年に1万6431票、2016年には1万8400票と、最近とみに得票数を伸ばしているからだ。
都民ファーストの会は公明党と政策協定を結び、公明党は与党宣言も行った。だが今回の奇妙な決議のあり方から、小池知事の複雑な選挙戦略の一端が見えてくる。
さて6月14日の本会議の冒頭、議席ナンバーが29番だった里中氏が隣の28番に移ることになった。この28番こそ本橋氏が4カ月前にその議席に移動する際にパワハラ問題を起こしてしまった因縁の議席なのだ。
里中氏は席を移るとき、氏名柱を持って立ち上がった。そして意味深な笑いを浮かべながら、28番の議席に座って自分で氏名柱を机に立てている。
その脳裏には一瞬でも本橋氏の顔が浮かんだに違いないが、はたして豊島区内の有権者はこの問題をどのように受け止めるのか。
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