この要因について『ネイチャー』は「(科学分野における地位の)全般的な低下傾向により、日本の若い研究者たちは厳しい状況に直面しており、フルタイムで働けるポジションも少なくなっています。日本政府の研究開発支出額は、世界で依然としてトップクラスであるものの、2001年以降ほぼ横ばいです。一方で、ドイツ、中国、韓国など他の国々は研究開発への支出を大幅に増やしています」と指摘。
さらに、「この間に日本の政府は、大学が職員の給与に充てる補助金を削減しました。国立大学協会によると、その結果、各大学は長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用する方向へと変化したのです。短期契約で雇用されている40歳以下の研究員の数は、2007年から2013年にかけて2倍以上に膨れ上がっています」と分析している。
素粒子物理学の研究者である東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授は筆者によるインタビューで「近年では中国勢の研究力の向上が著しく、10~20年前に考えていた以上のスピードで発展している」「物理学は安全保障に関連する分野ということが影響しているのかもしれないが、中国政府からの資金拠出が豊富だ」と話した。
資金力で中国に対抗することは困難
むろん、日本の財政が厳しいことは明らかであり、財政支出の競争で出遅れてしまうことは避けられないだろう。
しかし、山下特任教授は「基礎研究の恩恵が得られるまでは10年、20年かかると考える必要がある」「その経済効果を予想することは難しいが、だからといって確実性だけを重視してインフラ投資などの箱モノ投資ばかりするのではジリ貧だ」とし、「経済や財政の問題解決に対して科学者が積極的に関与することで、できることはたくさんあるだろう」との考えを示した。
OECDのまとめを見ると、日本の科学技術関係費(官民合計)は他国と比べて相対的に伸び悩んでいることがわかる。中国の増加が目立つが、それでも依然として対名目GDP比ではあまり高くないため、今後も増加余地がある。GDP成長率の違いを考慮すれば、日本が金額で他国に対抗することは難しい。
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