日本は科学技術関係費における基礎研究の比率が高い。しかし、政府部門の支出割合は低下しているため、本来であれば官主導で行う必要がある各種基礎研究も民間部門に依存していることになる。
リスクが高い研究開発を民間部門が過度に担うことで、市況の悪化などに耐えられなくなるリスクをはらんでいる。
科学技術関係費の民間依存は足元でも進んでいる。一般政府の科学技術関係予算はおおむね横ばいであるため、日本全体の科学技術研究費の増加は「大学等」や「非営利団体・公的機関」ではなく「企業」が中心となっている。
「科学技術費」をめぐる議論は整理されていない
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)は「過去20年以上にわたって社会保障関係費以上のペースで(科学技術振興費は)拡充」していると主張するが、一方で文部科学省は「直近の10年間は社会保障関係費を除いた一般歳出全体と同等以下で(科学技術振興費は)推移」と、同じデータの解釈でも真っ向から対立している(財政制度等審議会財政制度分科会〈2016年11月4日開催〉資料から)。
山下特任教授は「財政健全化を進める中で、どうしても科学技術関係費は『費用』として捉えられてしまうため、(上記のような)金額ベースの議論に終始してしまう」「基礎研究は研究開発後のリターンが読みにくい面もあるが、どれだけ予算が必要で、どこまでを政府が拠出する必要があるのかという議論をすべきだ」と話す。
また、「このような議論が行き着く先は『民間部門』の研究開発費を増やそうという話になるが、営利団体が行う基礎研究には限界があることも事実である」「そもそも、研究を行った主体が十分な恩恵を受けられる制度作りが成功すれば、民間部門の研究開発は自動的に出てくるだろう」とし、民間部門の研究開発の課題を指摘した。
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