それゆえ、EUは英国の離脱交渉に建設的な心持ちで対応し、将来の予測不可能性を認識する必要がある。長びく「離別」へのプロセスの中で、英国国民が離脱よりもEUの一部であることにより魅力を感じる可能性がある。しかしこのシナリオは、EUが英国を含む他国が加盟したいと思えるような組織に変貌し、イギリス海峡の両側に住む人々の心境が変化することを前提としている。
両方の条件が満たされる可能性はわずかではあるがゼロではない。英国の離脱はEU崩壊への一歩であり、それゆえ双方に不利な提案であるというEU全体の認識が必要だ。対照的に、EUが再び魅力を取り戻すことは人々に、特に若者世代によりよい未来への希望を与えることになる。
「新たな欧州」はどうあるべきか
「新たな欧州」は、2つの重要な点において現在の体制とは異なるだろう。まず1つ目はEUとユーロ圏を明確に区別することだ。そして2つ目は、ユーロ圏では時代遅れの条約が適用されており、条約の変更が不可能なことから体制の立て直しもできないと認識することだ。
既存の条約は、加盟国が資格を有する場合には、すべての加盟国でユーロの導入が期待されているとしている。これは、スウェーデン、ポーランド、チェコといった、ユーロ導入の意志はなく、「ユーロ非参加国」として扱われている国々に対して、不条理な状況を生み出した。
その効力は表面的なものではない。EUはユーロ圏が内核を構成し、そのほかの加盟国を劣位に追いやる組織となっている。これは変える必要がある。ユーロが持つ多くの未解決問題がEU崩壊を招いてはならない。
ユーロとEU間の関係を明確にしなかった失敗は、より広範囲な欠陥を反映している。それは、さまざまな加盟国が異なるスピードで移動しているが、すべての加盟国が同じ目的地に向かっているという仮説である。事実、「ever closer union(絶えず緊密化する連合)」の理念を明白に拒絶する加盟国の割合が増加している。
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