ソロス氏「2つの要素見直せばEUは復活する」 ただし、このままでは崩壊を免れない

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現在、「マルチスピード状態」にある欧州を、加盟国がさまざまな民主的選択をすることを可能にする「マルチトラック」な欧州に置き換えることは、計り知れないほどの有益な効果をもたらすだろう。現在、加盟各国は、主権を移譲するより、あらためて主張したいと考えている。しかし、連携が肯定的な結果を生むならば、各国の姿勢は改善され、有志連合により追求される目標は、全体的な加盟を誘引する可能性もある。

3つの分野において有意義な前進が必要とされている。1つ目が英国離脱によって示されたような領土の崩壊、2つ目が難民危機、そして3つ目が十分な経済成長の欠如である。3つの問題すべてにおいて、欧州は非常に低い基盤の連携から始まっている。

特に難民危機に関する基盤はもともともろいうえ、一段ともろくなっている。欧州にはまだ包括的な移民法がない。各国は国益につながることを追求し、その結果しばしばほかの加盟国に対して利益の妨げとなっている。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は正しかった。難民危機はEUを崩壊させる可能性がある。しかし私たちはあきらめてはいけない。欧州が難民危機を緩和するうえで有意義な進歩を遂げることができれば、その勢いは前向きな方向に変わるだろう。

EU支持は勢いを増している

私はその勢いを信じている。それはフランスでマクロン大統領が当選する前、3月に行われたオランダ総選挙における、政治家ヘルト・ウィルダースの敗北から始まっており、今後もEUのトップダウン型の政治的プロセスをよりよい方向に変える可能性がある成長の勢いを感じることができるのではないか。

EU支持派の唯一の候補者であるマクロン氏が勝利したことで、9月のドイツ選挙の結果についてもより強い確信を持っている。EU反対派と、外国人排斥が色濃い政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持が衰え続けた場合、多くの有権者がEU支持と傾く可能性がある。こういったEU支持派の勢いは、最大の脅威であるイタリアの銀行危機および移民危機を乗り越えるに十分なものとなるだろう。

また、主に若年層により支えられている自発的で草の根的な取り組みも注目に値する。具体的には、11月にフランクフルトで始まり120都市に広まった「Pulse of Europe(ヨーロッパの鼓動)」運動、英国の「Best for Britain(イギリスに最善を)」運動、そしてポーランドの政党「法と正義(PiS)」に対する反対運動、またハンガリーのオルバン首相の党であるフィデス=ハンガリー市民同盟(fidesz)への抗議デモなどだ。

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