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欧州諸国は二度の世界大戦という悲劇を乗り越え、主権の共有と統一を目指す、世界で最も大規模な実験に乗り出した。このプロジェクトは数十年間をかけて目覚ましい成果を上げたが、現在では崩壊のリスクに直面している。
原因は金融危機や難民問題、安全保障問題、統合プロセスの停滞など複合的なものだ。また欧州全体に不安定な政治環境が生じ、ポピュリズムやナショナリズムが勢力を拡大している状況もある。そうした傾向をはっきりと示すのが、EU(欧州連合)における法の支配の衰退だ。
背景には難民・移民への反発
EU加盟国の中で、こうした衰退が目立つのがハンガリーとポーランドだ。ハンガリーでは2010年再任されたオルバン首相が基本的人権を無視し、言論の自由を制限して、難民をあしきものだと決め付けている。
同首相は難民問題を利用して国民の閉塞感を刺激し、大衆の支持を拡大して独裁色を強めているのだ。全力を尽くしてEUを弱体化させているわけである。EU側は方向転換をさせようと試みたが、逆に同首相はこれで勢いづき、民主主義の規範に反する非道な行為に走っている。
ポーランドでも民主主義の危機が浮き彫りになっている。2015年秋の総選挙で、反移民を掲げる保守政党「法と正義」(PiS)が絶対多数の議席を確保。同党はポーランドの憲法裁判所に手を入れ、法の支配を弱体化させようとしている。
この試みは裁判所自体だけでなく、欧州の民主主義を監視するベニス委員会からも批判された。それでもPiSは、裁判所が法案の違憲性について判断するのを巧妙に妨げている。ポーランドだけでなく、欧州にとっても深刻な事態だ。
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