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ブラジルの政治的危機は頂点に達しているようだ。政府会計の不正操作に関わったとされるルセフ大統領の弾劾手続きを下院が認めたのを受け、上院は近く、弾劾法廷設置の是非に関する採決を行う。81人いる上院議員のうち42人が賛成すれば、ルセフ氏は最高180日の停職処分となり、テメル副大統領が大統領職を代行する。現状からすると、ルセフ氏の大統領任期の最後の2年を、テメル氏が務める公算が大きい。
次に何が起きたとしても、ブラジルが危機を脱するわけではない。同国の経済状況は悲惨だ。その惨状は、ルラ前大統領からルセフ氏が引き継いだポピュリスト(大衆迎合主義者)政治の直接的な結果である。
大衆迎合政治のなれの果て
商品価格高騰で好景気となった2000年代初頭、ルラ政権は消費者と経済団体に補助金を支給し、エネルギー価格を人為的に抑え、国内総生産(GDP)の2倍以上のペースで政府支出を増やし始めた。結果として公的債務が増大し、現在はGDPの70%に達した。そして赤字はGDPの11%近くまで膨れ上がっている。
ルセフ氏は問題を究明して政策を変えたりはせず、不正会計を行ったとされる。商品価格が暴落したにも関わらず、社会的移転を減らさずに基礎的財政収支の黒字目標を表面的に達成するのが目的だったようだ。目標達成は2014年の彼女の再選と、そして、現在の弾劾手続きをもたらした。かつてトップを務めていたブラジル石油公社(ペトロブラス)をめぐる大規模汚職事件も、彼女の立場を悪くした。
しかし、苦しんでいるのは、もちろんルセフ氏だけではない。ブラジルは今、過去80年で最悪の不況に直面している。失業率は約10%に達し、年間インフレ率は10%を超え、生活水準は急激に悪化した。ブラジル人は、毎年GDPの37%相当を税金として納めている。これは欧州の人々とほぼ同率だが、公共サービスの質はとても悪い。
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