テメル氏が大統領になったとしても、経済を軌道に戻して企業の景気信頼感を改善させ、政府への信認を回復させるには、迅速な行動が不可欠だ。そして、失敗の余地は残されていない。最初の使命は厳格かつ信用できる経済政策と、議会から必要な支援を得られる内閣をつくることであろう。そのためには以下4つの課題を実践せねばならない。
1点目はインフラ投資の急拡大である。これは経済を復興させて雇用を増やす最速の方法だ。しかし、それに要する外国資本を得るために政府は、政治の透明性確保や規制の簡略化などを進めねばならない。
2点目は雇用市場の改善を進めて、労働コストを大幅に切り下げ、ブラックマーケットのような非公式経済部門を縮小させることだ。
3番目は年金改革だ。支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げるべきだとの意見は一致しているが、給付削減には強い抵抗がある。打開策として有効なのは、公共部門に焦点を当てることだ。ブラジル政府は、民間部門の退職者2800万人に与える額とほぼ同額の給付金を、退職した公務員95万人に支給しているのだから。
最後に、ブラジルは世界経済に再参入する必要がある。それには生産性向上や輸出拡大などが必要だ。もしテメル氏の政府が最初の3点で成功を収め信用を築ければ、この4番目の目標を達成する上でも非常に有利になる。
悪循環を断つには痛みも必要
ただ、以上の課題を達成できても、ブラジルが長い間陥りやすかった、バブルがはじけて不況となる悪循環を止めるには不十分であろう。そのためにブラジル人は、自身をこういった状況に追い詰めた、自分たちの態度と期待感をじっくり見つめねばならない。
真の変革とは、家父長的で介入主義の国家に甘んじるのをやめ、不愉快ではあっても必要な政策調整を支持することなのだ。また、この国を希望に満ちた道へと進ませるため、政治家と実業家の無責任な行動は、明るみになるだけでなく、罰せられなければならない。
ルセフ氏が弾劾される公算は大きいが、それ自体は何の問題解決にもならないだろう。しかし、ブラジルの前進を妨げてきた考えや価値観を葬ることには、役立つかもしれない。
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