ドル高に元安、新興国と資源国に追い撃ち 資金流出のおそれ、通貨危機再び?!
米国FRB(連邦準備制度理事会)は、年内にも政策金利を引き上げると予想されており、米ドル高観測によって、新興国および資源国からの資金流出が続いてきた。こうした中、8月11日に中国人民銀行が、過去数カ月にわたり米ドルとペッグ(固定)状態にあった人民元の実質的な切り下げを行ったことは、市場に米ドルの「独歩高」を意識させ、新興国や資源国通貨への下落圧力を強めることにつながった。
その影響が特に色濃く出ているのは、近年、中国経済との連動性を強め、足元の中国の景気減速のあおりを受けやすい、ASEAN(東南アジア諸国連合)だ。
不安定なインドネシア、マレーシア
インドネシアやマレーシアは資源国でもあり、現下の商品市況の調整も、景気低迷や対外収支の悪化につながるとの連想を生みやすい。マレーシアでは政治資金をめぐる疑惑からナジブ政権の支持率が低下し、タイでは暫定政権の長期化による民政移管の後ずれが懸念されるなど、政治的に不安定な状況も続いている。タイにおいては今月発生した爆弾テロによる情勢不安も懸念される。
結果として、海外投資家の間には、こうした国々から資金を引き揚げる動きが出ている。タイやインドネシアは、1997年にアジア通貨危機の“震源”となった国でもあり、投資家の中には根深い不信感があるのだ。
実際には通貨危機を教訓に、アジア域内で外貨を融通し合うセーフティネットが構築されており、アジア発でグローバル金融市場に危機的状況が伝播するリスクは大きく軽減された。むしろ資金流出がこうした国々の経済を弱体化するおそれがある。
資金流出圧力が高まっているのはアジアだけではない。「フラジャイル(脆弱な)・ファイブ」と呼ばれる5カ国もある。これらの国では、2013年、バーナンキ前FRB議長による量的金融緩和の終了を示唆する発言をきっかけに資金流出が加速し、国際金融市場の動揺(TaperTantrum)が起きたことは、記憶に新しい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら