ドル高に元安、新興国と資源国に追い撃ち 資金流出のおそれ、通貨危機再び?!

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なお、経常黒字ではあるものの通貨安圧力がかかりやすい国として、韓国が挙げられる。経常黒字の背景には、中国の景気減速による輸出鈍化の一方で、内需低迷により輸入も減少している事情があり、景気の弱さが意識される。97年の通貨危機の記憶も残る昨今、外資系金融機関の存在感が大きいことも、そうした思惑を生みやすい。再び危機に陥る可能性は大きく後退しているが、中国経済や金融市場の動向に揺さぶられやすい状況が続きそうだ。

ちなみにインドは、14年後半以降の原油安の恩恵でフラジャイル・ファイブを脱し、モディ政権による構造改革への期待も高い。しかし、ここに来て、雲行きが怪しくなった。

モディ政権が掲げる構造改革のスピードが金融市場の期待ほどではないうえ、7月から始まった国会では、懸案のGST(財・サービス税)導入に関する法案審議が野党の反対で進まず、冬の国会に持ち越されることが決まった。土地収用法や労働法制の改正など、対内直接投資の呼び込みに不可欠な重要法案が目白押しの現状で、改革スケジュールの後ろ倒しは避けられず、海外投資家からの評価は損なわれよう。年明け以降比較的安定していたルピー相場に、再び下落圧力がかかることも懸念される。

これらの国々以外でも、大半の新興国や資源国は、ここ数年、中国経済との連動性を高めている。中国の景気減速の影響は免れず、当面は通貨安圧力がかかりやすい。今後の焦点はその耐久力次第ということになろう。

「週刊東洋経済」2015年8月29日号<24日発売>「核心リポート03」を転載)

西濱 徹 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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にしはま・とおる

一橋大学経済学部卒、国際協力銀行(JBIC)で、ODA部門(現、国際協力機構(JICA))の予算折衝や資金管理、アジア向け円借款の案件形成・審査・監理やソブリンリスクの審査業務などを担当。2008年より 第一生命経済研究所、2015年4月より現職。担当は、アジアをはじめとする新興国のマクロ経済及び政治情勢分析

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