新興国経済がどこも冴えない決定的な理由 柔軟性と適応力を維持するにはどうすべきか

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ブラジル経済は成長するどころか、後退している(写真:digi009)

世界の未来を形作る一大勢力になるといわれた新興諸国の経済が悪化している。原因は政治だ。

たとえば、ブラジルではかつて好景気がずっと続くと予想されていたが、この2年以上ほとんど経済は成長せず、現在は縮小傾向にある。

「新興国ストーリー」の問題点

インドネシアはどうか。経済は拡大を続けているが、直近四半期の成長率は年換算で4.7%だ。人口の増加を勘案すると期待外れだ。同じことはトルコにもいえる。トルコの成長率は、直近の四半期では2.3%に低下した。2010年および2011年の高度成長期に9%前後で拡大したのに比べ精彩を欠く。南アフリカは、金などの資源のおかげで好況に沸いた年も、逆の不況時も、貧困率が改善していない。

では中国はどうか。景気が低迷すると民間のエコノミストが息を吹き返し、GDP(国内総生産)成長率を独自に計算する。景気低迷期は、彼らは政府の統計を信用しないからだ。政府統計では、中国の年間成長率はしっかり7%に張り付いていて、政府目標と「偶然に」一致していることになるが、民間エコノミストは4~6%だと推定している。

世界経済の成長や、コモディティ市況、金融市場にどんな紆余曲折があっても、「新興国ストーリーは無傷のまま」という見方を、近年よく耳にする。「新興国は先進国より高い成長を遂げるよう運命づけられている」、「テクノロジーや経営技術を海外から取り入れる一方でモノやサービスを輸出し、低賃金と高い生産性というすばらしい取り合わせをうまく利用できる」と企業の経営陣や投資家は今でも信じているようだ。

ところがこの見方には問題がある。アジア、中南米、アフリカ、東ヨーロッパなど、多岐にわたる国々を一般化しすぎている。「新興国ストーリー」という考え自体が示唆しているように、もし収斂と高成長がただ単に必然性と運命によるものであるならば、途上国の成長が注目され始める何十年も前にも、その必然性は当てはまったはずだ。しかし現実は違った。

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