新興国の経済が持続的に発展する力をつけられるかどうかを決定する主な要因は、政治、政策、それに統治機構が重視する諸要素だ。真価が問われるのは、状況が悪くなり、国が変革を必要とする時だ。
ブラジルは過去4年間、景気後退を引き起こさずにインフレを抑えることがかなわず、政治の失敗が原因で行き詰まっている。運の悪さや、民間部門が起業家精神を欠いていることが理由ではない。ブラジル政府は、肥大化した政府部門を縮小する意欲・能力を欠き、広範な汚職スキャンダルを克服できないでいる。
なぜシンガポールから学ばないのか
ブラジル、インドネシア、トルコ、南アフリカは民主制国家であるが、政治が基本的な役割を果たしていない。行き詰まった経済をそのまま放置すると、創造的破壊と新たな状況への適応ができなくなり、持続的成長は阻害される。
法の支配と言論の自由が確立していない未熟な民主制は、独裁体制と比べて、明らかに劣るのだろうか。確かに、これら停滞に陥っている新興国には、シンガポールを教訓にしていないという非がある。今年建国50周年を祝った管理民主制のシンガポールは、ブラジルなどで足かせとなっている利益団体の抵抗や汚職の克服に成功してきた。
中国もまた、シンガポールから学んでいない。中国の現在の低迷は、国有企業の独占力に異を唱える民間企業の新規参入を許す自由化に、中国共産党がいまだ踏み切れないことに起因するようだ。
結論を言えば、新興国は柔軟性と適応力を維持できなければ、「発展」を続けることができない。そしてその柔軟性と適応力を決定する要因は政治制度と、利益団体に挑戦し、社会的対立を調停し、法の支配を維持しようとする政府のやる気にあるといえる。政治こそが問題なのだ。
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