ソロス氏「2つの要素見直せばEUは復活する」 ただし、このままでは崩壊を免れない

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ソロス氏が創設したヨーロッパ中央大学(ブダペスト)では、大学を閉鎖しようとしたオルバン・ビクトル首相への大規模抗議デモが勃発。このことからソロス氏が学んだこととは(写真: Lazio Balogh/ロイター)

今日の欧州連合(EU)は救済と抜本的な改革の両方を必要としている。欧州が存在の危機にある中で、EUの救済は優先課題だ。しかし、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が選挙運動中に強調したように、EUがかつて享受した支援を復活させることはそれほど重要ではない。

EUが直面する存続の危機は一部外的であり、連合は、それが象徴するものに対して敵対するパワーに取り囲まれている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、トルコのタイイップ・エルドアン大統領、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー・エジプト大統領、そして米国のドナルド・トランプ大統領もそうなりうるだろう。

しかし、その脅威は域内からも迫ってきている。EUは、2008年の経済危機の後、ユーロ圏に広がる状況とほとんど無関係となった条約によって統治されている。単一通貨を持続可能なものにするのに必要な最もシンプルな改革さえ、既存の条約外である政府間協定によってのみ導入することができるのだ。そして、欧州機関の機能が複雑化するにつれ、EUそのものは徐々に何らかの機能不全に陥っている。

英国のEU離脱は少なくとも5年必要だ

特にユーロ圏は当初意図していたものとは正反対になった。EUの意図とは、全体の利益のために主権の一部を放棄する意思がある、同じ志を持った国々の自発的同盟であった。が、2008年の金融危機後は、債権国が義務を果たせない債務国に対して条件を突き付ける組織に一変した。そして債権者は経済緊縮を求めることにより、債務者が負債から脱却することを実質的に不可能にした。

EUが何も手を打たずに現状維持が続くなら、改善の余地はほとんどない。つまり、EUには抜本的な改革が必要なのである。ジャン・モネが1950年代に欧州統合をスタートしたトップダウン型アプローチは、勢いを失う前、そのプロセスが長らく続いてきた。今の欧州では、EU機関のトップダウン型アプローチに、有権者が関心を持つのに必要なボトムアップ型イニシアティブを組み合わせた共同での努力が必要だ。

英国のEU離脱を考えてみても、両サイドに甚大な影響を与えることは疑いの余地がない。英国の離脱交渉はEU自体の存在危機からEUの注意をそらし、交渉は定められた2年間を上回り続くだろう。政治の永続性、特に現在のような変革のときには、可能性としては5年間がより有力だ。

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