レンツィ首相の上院改革にイタリアの有権者は反対(No)を突きつけた。
イタリアの国民投票は日本時間の12月5日午前7時(イタリア時間の4日23時)に終了、開票開始間もなく反対の大幅なリードが伝わり、日本時間の8時半にはレンツィ首相が辞任を表明するというスピード決着だった。
今回の国民投票は、英国の国民投票、米国大統領選挙と続いたポピュリズムの流れを引き継ぐか注目された。同日行なわれたオーストリアの大統領選挙は極右候補の敗北で右傾化の流れに歯止めを掛けたが、イタリアの国民投票はレンツィ首相に手厳しく不信任票を突きつけた。
国民投票の大差の否決によって、反対のキャンペーンを展開したポピュリスト政党「五つ星運動」や「北部連合」は勢いづいている。フランスの極右政党「国民戦線」の党首で次期大統領選挙の出馬を予定するマリーヌ・ルペン氏はツィッターで、「北部連合」の党首であるマッテオ・サルヴェーニ氏に、反対キャンペーンの成功への祝福を寄せた。
否決自体がポピュリズムというわけではない
だが、今回の国民投票の反対多数は、必ずしも反エスタブリッシュメントと位置づけられるものではない。国民投票で問いかけた上院の権限縮小は、法案制定プロセスの迅速化、政策基盤の安定化を狙いとした。他方で、上下両院間のチェック・アンド・バランスが働きにくくなる懸念があった。実は、改革案には、与党・民主党内のベテラン議員やシルビオ・ベルルスコーニ、マリオ・モンティ、ランベルト・ディーニなどの首相経験者らも反対だった。
また、国民投票の否決は、ポピュリスト政権の誕生に直結するものではない。実際には、賛成多数の方がポピュリスト政権誕生の可能性を高める面があった。
改革案では上院権限の縮小に伴い選挙制度も変わり、下院のみが国政選挙の対象となり、内閣の信任・不信任に関する権限を持つことになっていた。つまり、下院選挙で勝利すれば、政権を掌握できるようになったわけだ。他方、下院の新しい選挙制度では、最も多くの得票を得た第1党に下院の全630議席の54%に相当する340のプレミアム議席が与えられる。第1回投票で40%の最低得票率を超える政党がない場合は、上位2党で決戦投票を行う。五つ星運動は、国民の既存の政治に対する不満に寄り添い、総花的な主張を掲げる。左派右派どちらにも属さないという意味でも、決選投票では有利だ。
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