不寛容な日本に弾かれた若者を格闘技が救う 前田日明が不良更生のイベントを続ける理由

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格闘技を通じて彼らが社会に通じるドアを開けたとしても、その先の世界にセーフティネットが用意されているとはいい難い。

「このところ、日本人は理想像を躍起になって壊してきましたからね」

それはネット文化の「発展」と軌を一にしている。ウェブというバーチャル空間では、誰もが”自由”に”平等”に意見を発信できるようになった。凡夫のツイートが大反響を呼ぶこともある。怖ろしくも愚かしいことだが、凡夫は己と天才、一途に研鑽を積む人たちが同レベルだと錯覚してしまう。

「高みにある理想像を低いレベルにまで引きずり下ろして何が残ったのか」

再び前田の眼に鋭いものが宿った。

「日本人は理想を失ったばかりか、美しいもの、正しいものをめぐる議論の仕方まで忘れてしまったんです。今の日本は世界でも珍しいくらいに、善悪や貴賤、美醜の区別がつかない、けじめのない国になっています」

前田はその延長上に、現在の日本を覆う不寛容や格差があると断言する。

努力に努力を重ねる意味を知ってもらいたい

「未完成の子に必要なのは完成された理想。18世紀のイギリスにはジョージ・ブランメルという、ダンディの権化であり理想像がありました。ブランメルという模範があるからイギリスのファッションは飛躍的に発展した。しかも彼は下層貴族なんです。だけど自分の信じる美学を追求したおかげで、国王までが畏敬する存在となりました」

不良たちも格闘技を通じて、努力に努力を重ねる意味を知ってもらいたい。理想を抱いて突き進んでほしい。

「不良であっても、理想を求めていくうち生き方が変わってくる。根無し草だった彼らが輝きを放つようになるんです。そうなると周囲も彼らの存在に注目しはじめます。この輪が広がれば、日本人も理想を持つことの大事さに再び気づくはずです」

語り終えた前田は、新しいシガーを取り出した。葉巻を愛おしむように、じっくりと火をつける。そんな彼の仕草とジ・アウトサイダーに向き合う姿勢が重なってみえた。

(文:増田晶文/写真:北山景一)

前田日明 リングスCEO
1959年、大阪府生まれ。77年に新日本プロレスへ入団し、デビュー。その後、世界初となる総合格闘技団体リングスを旗揚げし、格闘技業界へ新風を吹き込む。99年に現役を引退後、HERO’Sスーパーバイザーを務め、ジ・アウトサイダーをプロデュースする。
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