「古民家」こそがインバウンド観光の目玉だ 「瀬戸内」が取り組む観光客誘致策の舞台裏

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――せとうちDMOが進める古民家や街並みの再生プロジェクトについて詳しく教えてほしい。

空き家問題は全国的な問題であるが、瀬戸内においても、特に歴史的価値のある古い建物が次々と壊されているという状況がある。これを何とか食い止めたいという思いと、インバウンドが増加しているマーケティング上の機会を結び付け、2021年までの5年間で100棟の歴史的建造物を宿・レストラン・カフェなどの商業施設として再生・観光価値化することで、旅行者を誘致し、旅行消費を活性化させることを目標にしている。

――再生プロジェクトの資金はどのように調達しているのか。

日本政策投資銀行と瀬戸内7県の第一地銀が主な出資元となり、せとうちDMOの事業資金供給主体として2016年5月に組成した「瀬戸内観光活性化ファンド」から投資している。ファンド期間は10年、規模は98億円となっている。その投資案件の第1弾となる宿が、この秋に愛媛県の内子町に完成する。

なぜ「内子町」から始めるのか

内子町の宿泊施設「HOTELこころ.くら」洗面・風呂(写真提供:ホームアウェイ)

――せとうちDMOの事業エリアで、すでにホームアウェイに掲載されている物件はあるのか。

(上述の)投資開発案件の建物のオーナーが、すでに運営している古民家宿があり、それらが掲載されている。「町屋別荘こころ」と「ホテルこころ・くら」の2棟で、ともに内子町にある。

――写真を見ると、“和モダン”な感じに改装されているようだが、古民家を現代の生活に合うような形で再生する手法をとっているのか。

顧客のメインターゲットをインバウンドとしていることから、ハードな和風建築だと、やはりつらい面があり、今後の開発案件に関しては、現代の快適性を装備することは必要と考える。

――内子町は瀬戸内の中で特色のあるエリアなのか? 開発の第1弾として選んだ理由は何か。

内子町と隣の大洲市を含む「内子・大洲」は、DMO設立時に観光庁により決められた周遊ルート上に存在する重要拠点であり、われわれの重点施策エリアのひとつだ。典型的な地方の城下町と田舎町であり、古い街並みをはじめ、かつて、木蝋(もくろう)という和ろうそくの産地として栄えた歴史が、色濃く残っている。

特に欧米や、台湾、タイの旅行客は、日本観光のゴールデンルート以外の、落ち着いた静かな場所で、濃い日本の体験をしたいというニーズが強い。内子・大洲は、そうしたニーズにマッチしている場所であることが、スタートの場所として選択した大きな理由だ。

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