そういうことを考えると、夢を持つなら、とてつもなく大きな夢を持つべきだということです。若ければ若いほど、大風呂敷を広げるべきだと思います。最初から「なんとかすれば、なんとかなるだろう程度の夢」ではなく、「なんとかしても、どうにもならないかもしれないというほどの夢」を持つべきでしょう。
会社のなかで、それほどの大言壮語で「夢」を語る。周囲から、また上司から、あるいは社長から変人と思われても、こうしてこの会社を発展成長させる、将来はこの俺がこの会社を1人でしょって立ってやる、イギリスの英雄、ウィンストン・チャーチル卿ではありませんが、俺1人で十分だと考える。そして、この会社を日本の人たちのみならず、世界中の人たちの幸福に役立つ会社にしてやる。そういう大風呂敷を広げることこそが大事ではないかと思います。
あるいは、100年後には、火星かどこかに支社をつくると言い出してもいいかもしれません。事実、イギリスの理論物理学者、スティーブン・ホーキング博士が「人類は別の惑星に移住を始める」などと言い出しています。そのための夢を語り、その夢が実現する方向を仕事に取り入れていく。そういうスケールの大きい人材が、今の時代、一層必要であるということです。もし、そういう夢を理解できない社長、上司であるならば、さっさと電車に乗って次の「駅」に行けばいい。
夢がないのではない。夢は多様化している。それぞれの若い人たちが時代に合った夢を持っているということです。
ただ、中途半端な夢ではダメです。正真正銘の大きな夢を語ってほしい。虚言はいけませんが、将来に向かっての「とてつもなく大きい風呂敷」は、大いに広げてほしいと思います。
およそ「人間は歳をとるにつれて、角が取れて丸くなる」と言われますが、実感としてそのとおり。若い者が悟り切った雰囲気で、したり顔をして語る。まるで聖人君子のようなことを言う。そういう若いビジネスマンと接すると、ああ、この人は先はないと感じたりします。性格もまろやかなんて、なんの魅力もありません。これ以上年月が経てば、もうこの人は摩滅して、消えてしまうのではないかと思うこともあります。尖(とが)っているのが青年。やがて尖ったものが取れてくる。さらに50、60歳ともなると、ボールのようになり面白くなくなるものです。
「完成された器」は成長できない
そういえば、松下幸之助さんが「人を採用するときには、キミの好みの人ばかりを採ったらあかん。キミが、どうもならんかもしれんと思う人も採れや」と言っていましたので、これはいかがかと感じた人も結構採用したものです。その中でも、応募の理由を聞くと「私1人で、この会社をさらに発展させ、将来は世界を飛び回って、この会社の活動を拡大成長させていきたいので」という答え。ほかの4人の面接員は「傲慢だ、生意気だ」とオール×でしたが、私が「採用」ということで合格にしました。
その後、彼はASEAN諸国、米国NYに支社をつくり、大いに活躍してくれました。彼は、私の退職後まもなく彼も退職してしまいましたが、いまはNYに移り住んで、自由に翼を広げて大活躍しているようです。
要は、若いときから「完成された器」はもうそれ以上、成長はおぼつかないこと。大風呂敷の夢を広げて、金平糖のように尖ったところがある若い人材が長い目で見ると伸びるし役に立つ。
私の実際の経験から、そのようなことを自信を持って断言できるということです。
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