TASAKI、ファンドに翻弄された「10年」の決着 いったいファンドはいくら儲かったのか

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抱えるのは自己のれんだけではない。これまでのセオリー通りなら、ペーパーカンパニーのスターダストは事業会社のTASAKIを吸収合併し、社名を変更して新生TASAKIとなる。

買収にかかった費用は新生TASAKIが返済するか、売却先の株主が負担することになる。

MBKは318億円で買収したといっても、このうち借金で調達した200億円分は新生TASAKIにツケ回せるので、自らが出資の形で出した金額(この場合、残額の118億円〜186億円)以上で転売できれば利益が出る。

過去、同様のスキームで非公開化した企業の場合、買収者が公開買付届出書に記載された出資予定額を、大幅に下回る金額しか出資していない例が散見される。

非公開化され、買収者が100%支配するようになれば、誰のチェックも受けないし、そもそも買収者には公開買付届出書記載のとおりに出資する義務すらない。

したがって、MBKが186億円出資する保証も義務もない。借入金の比率を高め、出資額が小さければ、小さいほど転売時の利益が出せるのである。

非公開化しないと、改革できない?

TASAKIの株主にとってこのディールは納得のいくものだったのか(写真:編集部撮影)

TASAKIは非公開化を決断した理由に、インバウンド需要一巡後の次の一手として海外展開を進めるにあたり、業績が変動する可能性があり、株主の理解を得られない可能性があるということを挙げている。

2008年の危機の時ですら上場したまま乗り切ったのに、非公開化しなければできない改革など果たしてあるのか。

さらに、居残りたい株主は残らせてやることも可能なはずで、実際、上場会社の事例ではないが、横浜スタジアムを買収した横浜DeNAベイスターズは、少数株主を追い出し(スクイーズアウト)て、100%支配することも技術的には可能だったのに、それをしなかった。

なぜ居残りたい少数株主をも強制的に排除するのかについて会社側に尋ねたが、「総合的な判断」とするのみで、納得の行く回答は得られなかった。

8月1日に予定されているスターダストによるTASAKIの吸収合併は、6月26日開催の臨時株主総会での特別決議を経て実行される。3分の2以上の賛成で可決されるので、スターダストが8割以上を保有しているのだから、結果はやる前からわかっている。

だが、もしもTOBで90%以上の議決権を獲得していれば、臨時株主総会を経ることなく、応募しなかった株主にスターダストが売り渡し請求をかけることで強制的に保有株を買い取れた。

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