賃金が物価よりも上昇しないとデフレは続く

GDPデフレーターを分析するとよくわかる

輸入品の価格上昇が大きいにもかかわらず、輸入品以外の価格上昇がそれよりもマイルドなものであれば、消費者が購入する商品も、企業が国内で売買する財やサービスも、輸入品も輸出品もすべて価格が上昇していても、GDPデフレーターの上昇率がマイナスになるということが起こる。

逆に、2016年第2四半期のように、主要需要項目のデフレーターの上昇率がそろって前年同期比でマイナスとなっているにもかかわらず、GDPデフレーターの上昇率がプラスになるということも起こる。

消費者物価の上昇率は物価水準そのものが上がったか下がったかを示すのに対して、GDPデフレーターの上昇率は輸入物価の影響を控除しているという差がある。デフレが起こっているとか、インフレが激しくなっているとか、消費者や企業が感じるのは、消費者物価の上昇率のように物価水準の上下そのものに対してである。デフレの原因が、企業や消費者にしみ付いた「デフレマインド(デフレ心理)」という心理的なものにあると考えるのならば、消費者物価の上昇率を高めることには意味がある。

輸入金額の増加を上回る販売金額の増加が必要

では、GDPデフレーターの上昇率にどのような意味があるのか、非常に単純な経済で考えてみよう。基準年に1リットルの原油を100円で輸入し精製して1リットルのガソリンを作り、消費者に200円で売っていた(民間最終消費支出)としよう。このとき、実質GDP=名目GDP=民間最終消費-輸入=200円-100円=100円である。

原油価格が150円に上昇したときに、(1)ガソリン価格が据え置かれる、(2)ガソリン価格が原油価格上昇分の50円上がる、(3)ガソリン価格が原油価格の上昇率と同じ50%上昇する、という3つのケースを考えてみよう。ガソリンの生産量=販売量は1リットルで変わらないので、実質GDPに変化はなく100円のままだ。

まず(1)の場合には、名目GDPは50円(=200円-150円)になってしまう。実質GDPは変わらず100円なのでGDPデフレーターは50%の下落になる。同様にしてGDPデフレータの上昇率は、(2)の場合にはゼロ、(3)の場合は50%となる。

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