――中国における親日傀儡政権の失敗原因は何だったと思いますか?
複数の政権がありますから、さまざま原因があります。あえてひとつ言えば、日本のエリートが結集して作り上げた満州国の成功例を、各地で踏襲してしまったところが大きな要因でしょう。あまりに広い範囲を統治しようとしたため、日本人も現地の人も力のある人材を集めきれなかったのです。
また、日本人の中国人に対する不信感や差別感も問題でした。政権を樹立して現地の人材を登用した後も、信用せずに日本人の顧問を送り込んでがんじがらめに支配しようとした。人心掌握ができず、統治能力に欠けていたのも当然です。
――なるほど。『ニセチャイナ』にもそのような分析を載せていたら、さらに面白い本になったと思います。教科書のように淡々と書いているのはなぜですか?
純粋に技術的な問題です。私は自分の主義主張をうまく文章に書けないんですよ。「何があったのか」をずーっと書くことしかできません。
中国歴史研究は体力勝負?
――大学で教えているのも日中戦争史なのでしょうか。
いえ。三重大学で週に4コマで中国語を教えています。愛知大学では週2コマでレポートの書き方、豊橋の定時制高校では中国語と郷土研究を受け持っています。私は一介の非常勤講師ですから、来た仕事は全部やるのが基本方針です。
蒲郡は豊橋経由で東京に出やすいのがいいですね。月に1回は東京に行って、国会図書館などで資料を調べたり出版社の編集者と会ったりしています。研究者は部屋に閉じこもって論文を書くことに没頭しがちですが、私は意識的に外に出て営業活動をする。そうしないとチャンスや仕事がやってきませんから。
中国の古代史研究は頭脳勝負と言われています。資料が少ないので想像力を働かせなければならないからです。ただし、資料のほとんどは印刷物になっているので手に入りやすい。私がやっている近現代研究は逆です。資料は無尽蔵にある。ただし、現地に行くしか手に入りようがない。私も毎年、中国に行って資料を探し回っています。頭は使わなくていい。私の仕事は体力勝負なんですよ。
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