涼しい時間帯を選び、レースは現地時間の朝5時45分にスタート。スピードダウンを抑えるために鋭い曲がり角の少ない1周2.4kmのサーキット場(17周)で行われ、周囲の木々が風を防いだ。わずか3人の挑戦者に対して、ペースメーカーは合計30人ほど。通常のレースとは真逆ともいえる“グループ構成”が組まれた。
レースは常時、黒のランニングシャツ(ランシャツ)姿のペースメーカー6人が誘導。3人が横1列で引っ張り、他の3人が2列目を走る。最後尾に挑戦者という隊列だ。ペースメーカーは入れ替わるが、独自の隊列は変わらない。常時、時速20kmを超えるスピードで進むため、風の抵抗も大きくなるものの、6人のランナーが向かい風をガードした。
先頭が変わることもあり、ペースが安定しない場面もあったが、2列目の3人が“緩和剤”の役割を果たす形で、挑戦者のペースが一定になるように調整。さらに自転車に乗ったスタッフが給水ボトルを手渡すなど徹底的にサポートした。
それは自転車レースを見ているようだった。最後までペースメーカーに食らいついたのは、赤いランシャツ姿のキプチョゲ。中間点を59分57秒、30kmを1時間25分20秒で通過すると、35km付近までは2時間切りが期待できるスピードで進んだ。このペースがどれだけ異次元かというと、ハーフマラソン(1時間00分25秒/佐藤敦之)と30km(1時間28分00秒/松宮隆行)の日本最高記録と比べればわかるだろう。
2時間切りこそ、達成できなかったものの、世界歴代3位のタイム(2時間03分05秒)を持つキプチョゲが世界記録(2時間02分57秒)を大きく上回る2時間00分25秒でフィニッシュ。42kmまでペースメーカーが引っ張り、残り0.195kmはひとりで走って刻んだ、参考記録だった。
「BREAKING2」は何がすごいのか?
キプチョゲが異次元のタイムをたたき出したことはご理解いただけたと思うが、今回の挑戦には世界を驚かせたいくつもの“要素”が詰まっていた。
ひとつはナイキの「販売戦略」だ。今回の挑戦者たちが履いていた特注シューズの最新テクノロジーを搭載した「ズーム ヴェイパーフライ4%」の発売(日本では6月上旬発売予定)に合わせてのイベントでもあった。
「ズーム ヴェイパーフライ4%」はソールの中にバネの役目をするカーボンファイバープレートが搭載されており、ランナーへのエネルギーリターンを多くすることで、通常のシューズよりも4%少ないエネルギーで同じスピードが出せるという代物だ。4月のボストンマラソンで大迫傑(Nike ORPJT)が履いていたシューズでもある。
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