ニューヨークタイムズ紙は、「キプチョゲはナイキのスペシャルシューズを履いて、世界最速でマラソンを走った」という見出しとともに、賛否両論の声があることを報じた。特別な条件で出された非公認の世界最速タイムを新シューズのPRにつなげようとしたからだ。
オリンピックや世界選手権にペースメーカーは存在しない。ベルリン、ロンドン、シカゴ、東京などのメジャーレースには大会主催者側がペースメーカーを用意するものの、今回のように手厚くはない。世界記録を視野に入れたレースもあるが、ペースメーカーはレース途中からの参加は認められておらず、通常は30kmでミッションが終了する。そのため、残り12.195kmは自力で走らないといけない。交代制のペースメーカー、手渡しでの給水、公道ではない場所でのレースなどが公認とはならない理由になる。
筆者が特にすごいなと思ったのは、世界トップクラスのランナー3人を5月初旬に、非公認レースを走らせたことだ。世界のマラソンは春(2~4月)と秋(9~11月)にメジャーレースが集中しており、トップ選手たちは春と秋に1本ずつレースを走るのがスタンダードになっている。スケジュールを考えると、今回の挑戦者たちが春マラソンに参戦するのは難しい。彼らがメジャーレースで得られる出場料以上のマネーが動いていると思っていたら、キプチョゲには参加料として50万ドル(約5500万円)が支払われ、2時間を切った場合には100万~150万ドル(約1億1000万~1億6000万円)のボーナスが準備されていたという。
日本の「取り組み」は中途半端
低迷する日本マラソン界だが、金払いだけは、負けていない。日本実業団連合はマラソン強化特別プロジェクト「Project EXCEED®」を創設。日本記録突破者(男子は2時間06分16秒)に1億円、監督・チームに5000万円の奨励金を出すことに決めた。しかし、現状では2時間6分台すら出る気配がない。今冬のマラソンでは、井上大仁(MHPS)が東京でマークした2時間08分22秒が日本人最高タイムだった。
日本陸上競技連盟も2020年東京五輪のマラソン代表選考方法を発表したが、具体的な強化策は打ち出していない。どうすれば日本人ランナーは速くなるのだろうか? 実は今回の「BREAKING2」に似たことを日本もよくやっている。マラソンではないが、トラックの1万mレースで、日本企業に所属する外国人選手がペースメーカーを務めて、9900mくらいまで引っ張るのだ。外国人選手のアシストを受けて、世界大会の参加標準記録を突破した日本人選手は少なくない。
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