淘汰の嵐が収まったあと必ず生き残っていたい−−日本航空(JAL)社長 西松 遙

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淘汰の嵐が収まったあと必ず生き残っていたい−−日本航空(JAL)社長 西松 遙

一時は経営破綻もささやかれた日本航空が、500億円規模の人件費削減をテコに、予測を上回る好決算を発表、営業利益でライバルの全日本空輸を上回った。久々のストによる欠航など、社員側の危機感が緩みかける中で、リストラを続ける。追い打ちをかける燃料高。難しい操縦桿(かん)を握る西松遙社長に、日本航空の今とこれからを聞いた。

--業績的にも社内改革的にも、たいへんな変化率ですね。

半分くらいはリストラで出てきている利益ですからね。

社員には本当に申し訳ないと思っていますが、広い意味でのリストラの到達度は、まだ1、2割です。広い意味で、というのは、たとえば路線や機材の見直し。当社はまだジャンボを40機持っている。今の時代にそぐわない飛行機です。これが重荷になっているのが現状ですから。

--燃費効率のよさを期待されていたB787の納入が遅れに遅れています。全日空は超大型機A380導入に前向きですが。

この燃料費高騰で、正直、これは大きいですよ。結局、1年数カ月延びて、2009年10月納入ということになっていますから。

A380は検討の対象にはします。が、僕自身としては、これだけ燃料費が上がり、かつ景気も不安定な状況で、あの座席数を埋めるのは並大抵ではないと思っています。

それから、個人的に、なぜ超大型機で一度に運ばなければならないのか、の解が見つかっていません。いや、効率がいいのはわかるんです。でも、それは席が埋まってのことで、埋まらないとこれはもう、粗大ゴミになってしまう。お客様からすれば、たとえば東京-ロンドン間1便しかないより、時間がずれて2便あったほうが、自分の都合で選べて、むしろいいのではないでしょうか。

--不採算路線の問題も残っていますね。

不採算路線というのは、機材のサイズと需要がマッチしていないんです。端的に言うと、日本は飛行機が大きすぎる。だいたい、ジャンボを国内線に使っているのは日本だけです。羽田を発着する飛行機の平均座席数は300席超。これに対し、ロンドンやニューヨークは140席台。日本の飛行機は、倍大きいと思っていただいて結構です。

羽田の発着枠に限界がありますから、便数を増やす代わりに飛行機を大きくしてきた経緯があります。そうすると、どうしても地方では合わなくなる。機体を小さくしても、やはり合わない路線が出てくる。たいへん申し訳ないとは思いますが、われわれ自身が消えてしまっては責任も何もなくなりますから、何とかここでご理解賜りたく進めています。

こうした見直しや時代に合ったサービスの追求は、今後永遠に続くのでしょう。放っておくと、絶対固まってしまう。毎日、変える、と思い続けて、やっと時代に追いつけるかどうか、というところでしょうね。

--改革は永久に続くんだ、と。そのための社内の力はどうですか。

これですよ。ここが難しい。大きな枠組み、たとえば路線展開や機材、資本構成をどうするか、といったことは経営陣の仕事です。就任後2日目に増資を発表して、「けしからん」と非難を浴びるとか(笑)。

そのうえで毎日飛行機を飛ばす。JALはグループで毎日1150便前後飛んでいます。そのすべての便が、安全、定時、グッドサービスを当たり前として一日終わらないといかんわけですね。これを毎日毎日繰り返すわけです。それを実行するのが第一線の人たち。不都合があったら、新しいアイデアを出し、お客さんの反応を見て変えていく。彼らがどうモチベーションを持って、高い意識で毎日やってくれるかです。どうやってそんな風土に変えるか。こちらのほうが大変なんです。

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